
登場人物:
・マナブ: IT業界ビジネスマン。最近、歴史に興味を持つようになり、ただいま勉強中。
・歴史先生:歴史に詳しい街歩きの達人。マナブと一緒に旅をする。
紅葉の名所、中津川渓谷を渡る磐梯吾妻レークライン
絶景の磐梯吾妻スカイラインを通って浄土平へ
吾妻小富士へ登るとそこには驚きの光景が待っている
絶景はまだまだ続く:その高さに驚く「不動沢橋」
わざわざ行く価値がある全国屈指の高濃度硫黄泉:高湯温泉
紅葉の名所、中津川渓谷を渡る磐梯吾妻レークライン

中津川橋

マナブ:今日は裏磐梯から吾妻山を抜けて福島へと行きます。
歴史先生:裏磐梯からは、「磐梯吾妻レークライン」、そして「磐梯吾妻スカイライン」を通ります。特に「スカイライン」のほうは見どころたくさんの山岳ドライブですから、お楽しみに。

マナブ:まずは「磐梯吾妻レークライン」に入ってきました。小野川湖のそばをしばらく走って、そこから山を登っていきます。

涼風峠
歴史先生:まず最初の立ち寄りポイントは涼風峠(地図 ❶)。ここは小野川湖が見渡せるはずの場所なんですが、今は木々が伸びていて、あまり眺望は良くないようです。

三湖パラダイス
歴史先生:次は三湖パラダイス(地図 ❷)。ここも木や草が伸びていて湖は見えづらいのですが、磐梯山の眺めがみごとです。

中津川渓谷レストハウス
歴史先生:次は中津川渓谷レストハウス(地図 ❸)。
マナブ:先ほど、深い谷に架かる眺めのいい橋を渡りましたが、あそこが中津川渓谷ですね?
歴史先生:はい、そうです。橋を通り過ぎて少ししたところを左折すると、レストハウスと駐車場がありますので、ここに車を停めましょう。
中津川渓谷レストハウス(地図 ❸)
〒969-2751 福島県耶麻郡猪苗代町若宮吾妻山甲2998−47
9:00~16:00、無休(11月中旬~4月下旬は休業)
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
http://nakatsugawakeikoku.seesaa.net/

中津川渓谷の入口
マナブ:駐車場のはしっこに、中津川渓谷の入口があります。ここを下りて行くんですね。

レストハウスから渓谷へ下りる階段の途中を左に行くと橋に出る
歴史先生:渓谷へ下りる階段の途中を左折すると、橋に出ます。
マナブ:橋の方へ行ってみましょう。

中津川橋
マナブ:あ、先ほど渡った橋に出ました。
歴史先生:歩道が南側しかないので気を付けてくださいね。

橋の北側には西吾妻山が見える
マナブ:あれは西吾妻山、でしたっけ? 五色沼からも見えていましたね。
歴史先生:はい、そうです。ちょうど雪化粧が始まったようで、紅葉とのコントラストがいいですね。

橋の南側に見える中津川渓谷
マナブ:南側は深い谷になっています。
歴史先生:これが中津川渓谷。西吾妻山を水源とし、秋元湖に注ぐ川が深い谷を作っています。紅葉の名所として知られているのですが、今年は少し遅いのかな、まだまだのようですね。(取材は10月下旬)
絶景の磐梯吾妻スカイラインを通って浄土平へ

磐梯吾妻スカイライン入口付近から見た紅葉の山

マナブ:磐梯吾妻レークラインを抜け、国道115号線に入り、そこから磐梯吾妻スカイラインへと入ってきました。裏磐梯とは違って、このあたり、すでに紅葉のピークと思われます。
歴史先生:ここからどんどん高度を上げていきますよ。
マナブ:裏磐梯もけっこう高いところだったと思うのですが、どれくらいだったんでしょう?
歴史先生:桧原湖の湖面が海抜822mと言われていますから、裏磐梯はそれくらいですね。今日、これから車で登る浄土平は約1,600mです。
マナブ:おー、かなり高いですね。

国見台
歴史先生:まず最初の立ち寄りポイントは国見台(地図 ❹)。道路の左側、カーブになっているところに車を数台停められます。ここでは南西側の眺望が開けています。西側に見えるのは磐梯山です。
マナブ:すごく遠くまで見える場所ですね。これは気持ちがいい。

国見台から見た磐梯山


天風境
歴史先生:国見台からすぐ、続いては「天風境」(地図 ❺)。標高約1,200mの地点です。
マナブ:今度は道路の右側ですね。
歴史先生:正面奥に見えているのは高山(1804m)。看板によると、「この場所を吹く風はまるで天翔ける風のごとく風情がある」と表現されていて、そこから「天風境」という名前が付いたものと思われます。
マナブ:たしかに、風が実に気持ちいい。

双竜の辻
マナブ:天風境からしばらく走りました。すごいヘアピンカーブが続く道で、どんどん高度を稼いでいます。そして、その中でも一番大きなヘアピンカーブのところに何やら看板が立っています。
歴史先生:ここは「双竜の辻」(地図 ❻)と呼ばれる展望台。標高1543mまで登ってきました。
マナブ:カーブの手前で車を停めて、カーブの内側にある看板とベンチのところへ行ってみます。
歴史先生:ここは作家の井上靖さんが安達太良山と磐梯山の2つの山を2頭の竜が向き合っている姿に例えて命名した場所です。
マナブ:そうなんですね。有名作家でなくても、ここは視界が開けていて、何か名前を付けたくなるようなとても壮大なスケールを感じる場所です。

2頭の竜の間には猪苗代湖が見える
吾妻小富士へ登るとそこには驚きの光景が待っている

浄土平

マナブ:双竜の辻を過ぎると、道は比較的平坦で、高原のような場所を走ってきました。そしていよいよ目的地、浄土平(約1,600m)(地図 ❼)です。
歴史先生:ここにはとても広い駐車場があって、浄土平レストハウス、浄土平ビジターセンターがあります。

浄土平レストハウス
浄土平レストハウス
〒960-2157 福島県福島市土湯温泉町鷲倉山地内
9:00~16:00、無休(11月中旬~4月下旬は休業)
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
マナブ:浄土平レストハウスには軽食コーナー、売店などがあります。

浄土平ビジターセンターと天文台
浄土平ビジターセンター
〒960-2157 福島県福島市土湯温泉町鷲倉山地内
9:00~16:00、無休(11月中旬~4月下旬は休業)
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
https://www.jododaira-vc.jp/visitorcenter.html
マナブ:ビジターセンターにはハイキングコースの案内や付近の地形のジオラマなどがあって、とても参考になります。

ビジターセンターの裏には湿原が広がっている

浄土平の近くの斜面からは噴気が吹き出している
歴史先生:ほら、あそこ、見てください。
マナブ:噴気が激しく出ていますね。
歴史先生:まさに私たちは活発な火山の中に来ているんだと実感します。

マナブ:地図を見ていて、やっぱり気になるのが「吾妻小富士」です。これも火山ですよね?
歴史先生:はい、そうなんです。わりと簡単に上まで行けますので、登ってみますか?
マナブ:ぜひぜひ。

吾妻小富士の登山口
歴史先生:駐車場から道路を渡ったところが登山口です。

整備された階段
マナブ:登山道というより、散策のための階段という感じで、山頂まで続いています。普段はスニーカーで十分。今日は積雪があるので少し歩きづらいですが、そうでなければ楽に上れそうです。

頂上まで階段が続く

登山道からは浄土平がよく見える
マナブ:ずいぶん上まで登ってきました。皆さん割と観光に来たままの軽装で登っています。上に来ると、浄土平がよく見えますね。

いよいよ頂上
マナブ:ふぅー、階段を上って頂上まで来ました。
歴史先生:さぁ、こちらを見てください。

吾妻小富士の火口
マナブ:うわぁー、大きいなぁ。
歴史先生:吾妻小富士の火口ですが、直径がおよそ500mもあるんです。
マナブ:それって?
歴史先生:富士山の火口(お鉢)の直径が700~800mですから、それと比較できるくらいの大きさです。
マナブ:それはすごい。地形図で見て大きいのはわかっていましたが、それにしても想像を超える大きさです。

反時計回りに火口を一周できる
歴史先生:吾妻小富士ですが、非常に若い火山です。この火口が大噴火したのは約6,000年前。
マナブ:というと、すでに地球上には古代文明が登場していますね。
歴史先生:はい、そうですね。今のきれいな富士山のような形は成層火山というよりも「火砕丘(かさいきゅう)」と言えるもの。すなわち噴火の時の溶岩やスコリア、火山灰などが積もってできた丘、なんです。
マナブ:スコリアって?
歴史先生:噴火の際に、ガスで無数の穴の開いた、黒っぽい石のことです。
マナブ:吾妻小富士はまだ若いので、きれいな形を保っているんですね。
絶景はまだまだ続く:その高さに驚く「不動沢橋」

日本のアリゾナ、と呼ばれる荒野

マナブ:浄土平を後にして、磐梯吾妻スカイラインを北東へ走ります。
歴史先生:吾妻小富士の斜面のヘアピンカーブで下りると、そこには「日本のアリゾナ」と呼ばれる荒野が広がっています。
マナブ:たしかに西部劇で出てきそうな風景ですね。
歴史先生:ここは車を停めて写真を撮りたい衝動に駆られますが、火山性ガスが出ている地域なので、車の停車は禁止されています。写真は吾妻小富士から見下ろしたものです。
マナブ:絶景ですね。
歴史先生:絶景はまだまだ続きますよ。

天狗の庭

天狗の庭付近の紅葉
マナブ:しばらく走ると、右側の道路脇に車が数台停められるスペースが出てきました。
歴史先生:ここは天狗の庭(地図 ❽)と呼ばれるポイント。吾妻小富士を背景に紅葉のきれいなところでもあります。
マナブ:ここもいいですね。

展望台から見下ろす福島の街
マナブ:天狗の庭を過ぎてヘアピンカーブで高度をグングン下げたところに、展望台と駐車スペースが作られています。
歴史先生:ここは不動沢橋の100mほど手前。ここに車を停めて歩きましょう。もうここからだけでも十分に絶景ですが、橋からはさらに絶景が見られますよ。
マナブ:それは楽しみです。

不動沢橋を歩いて渡ろう

不動沢橋からの眺め
マナブ:不動沢橋に来ました。うわぁー、これは絶景ですね。
歴史先生:福島の街が良く見えています。中央のこんもりとした丘は信太山(しのぶやま)。福島市街地のすぐ北側にあって、古くからの信仰の山であり、桜や夜景スポットとしても人気です。
マナブ:ということは、そのすぐ右側が福島市の中心部ですね。それにしても福島市街地がずいぶん下の方に見えますが。
歴史先生:この橋は標高約1,200m。これだけの高さから街を見下ろせる橋なんて、他にはあまりありません。

つばくろ谷
マナブ:さて、橋の反対側(山側)に来ました。あ、滝がある。
歴史先生:ここは「不動沢」、あるいは「つばくろ谷」と呼ばれていて、ツバメが飛び交う姿が良く見られるところ。谷の深さは80mほどあります。
マナブ:上の方に人工物がありますね。
歴史先生:あれは旧道の不動沢橋の名残です。あそこからの眺めも絶景なので車で行ってみましょう。あちらにも駐車場とトイレが整備されています。



不動沢橋
マナブ:うわー、これは絶景。
歴史先生:橋と谷、そして背後に福島の街が見えています。

不動沢橋と福島の街
マナブ:この橋がものすごい場所に架かっているのがよくわかりますね。
歴史先生:初代の不動沢橋はこの展望台の所に架かっていました。1959年(昭和34年)の磐梯吾妻スカイライン開通に合わせて建設されたトラス橋で、全長95m、当時は国内で最も高いところにある道路橋でした。しかし幅員が5.5mと狭く、観光バスのすれ違いができなかったようです。
マナブ:それで新しく架け替えることになった?
歴史先生:狭いということ以外にも、この地の厳しい冬の気象条件、さらにはすぐそばで火山性ガスが噴出し、土壌も強酸性であるという厳しい環境によって痛みが激しく、老朽化が早く進んでいました。そのため2,000年(平成12年)に現在の橋が架けられ、全長170m、幅員11mと、スケールアップしています。
マナブ:火山性の条件に対応できる新しい技術が使われているんでしょうか?
歴史先生:はい。強酸性で有名な秋田県の玉川温泉などで実験を繰り返し、腐食に強いコンクリートが開発され、エポキシ樹脂が巻かれています。
わざわざ行く価値がある全国屈指の高濃度硫黄泉:高湯温泉

高湯温泉 共同浴場あったか湯

マナブ:不動沢橋からヘアピンカーブが続き、高度がどんどん下がっていきます。
歴史先生:もうすぐ、どうしてもここには立ち寄りたい、という場所があります。
マナブ:それは何ですか?
歴史先生:高湯温泉。
マナブ:温泉ですか、いいですね。
歴史先生:どうしても、というわけは、全国でもトップクラスの効能があると言われる、硫黄濃度成分の濃さにあります。
マナブ:硫黄の濃いお湯?
歴史先生:はい。このためだけに、わざわざ福島までくる価値がある、そんな特別な温泉です。
マナブ:立ち寄りでも入れるんですか?
歴史先生:立ち寄り湯をやっているホテル・旅館もありますが、高湯温泉旅館協同組合が運営している共同浴場が気軽さも泉質も一番いいと思います。
マナブ:おぉ、いいですね。行ってみましょう。
高湯温泉 共同浴場あったか湯(地図 ❿)
〒960-2261 福島県福島市町庭坂高湯25番地
入浴券500円(小学生以下割引あり)
9:00~21:00(最終入館20:30)、木曜休
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
http://www.takayuonsen.jp/attakayu/index.html

共同浴場のすぐ横を流れる湯の川
マナブ:さて、共同浴場「あったか湯」に来ました。割と新しい、清潔感のある建物ですね。
歴史先生:料金も500円と非常に安い。完全な100%源泉かけ流しで加水・加温・循環をさせていません。浴槽はあまり大きくないので、たくさんの方が楽しめるよう、1時間という制限があります。
マナブ:なるほど。
歴史先生:でもここの最大の特徴はすべて半露天風呂であること。どうしてだかわかりますか?
マナブ:自然に囲まれた場所なので、外の空気を楽しんでほしいから、とか?
歴史先生:それもあるでしょうけど、実はガスのためなんです。
マナブ:ガス?
歴史先生:あったか湯はわずか60m先にある源泉から樋(とい)でお湯を引いています。その距離が非常に短いことから途中で硫化水素ガスが十分に抜けず、密閉した空間にお湯を引くとガス中毒事故を起こす可能性があります。そのため保健所からガスの濃度管理を厳しく指導されており、ガス濃度の高い日は営業できないこともあります。
マナブ:硫化水素ガスというのは怖いものなんですね。
歴史先生:2025年2月にも源泉管理のために源泉に近づいたホテルの支配人ら3人が中毒で亡くなっています。
マナブ:怖いですね。でも源泉との距離が近いということは、それだけ源泉そのものに近いお湯だということなんですね。
歴史先生:そのとおりで、ここ「あったか湯」ではとてもフレッシュな高濃度硫黄のお湯に浸かることができます。

ロビー
歴史先生:高湯温泉は室町時代に発見され、江戸時代初期には旅館ができて湯治場として賑わったとか。1933年(昭和8年)には海軍軍医学校の神林美治さんが「全国一の有効温泉」と紹介して有名になりました。
マナブ:そういう歴史ある温泉。入ってみると、とても硫黄のにおいが強く、お湯が濃い感じがしました。リラックスして長時間のんびり入るというよりも、この濃さを堪能して短時間で上がるイメージです。こういう温泉、面白くていいですね。
歴史先生:さて、ということで磐梯吾妻スカイラインをドライブしてきましたが、いかがでしたか?
マナブ:いやー、すばらしい。感動の連続でした。いくつもの展望台からのすばらしい眺め、吾妻小富士と浄土平の大自然、不動沢橋の絶景、そして高湯温泉。実は今まで名前も聞いたことがなかったのですが、これは第一級の観光ルートですね。驚きました。
