
登場人物:
・マナブ: IT業界ビジネスマン。最近、歴史に興味を持つようになり、ただいま勉強中。
・歴史先生:歴史に詳しい街歩きの達人。マナブと一緒に旅をする。
磐梯山ゴールドラインで裏磐梯へ。名物山塩ラーメンも味わおう。
湖沼だらけの裏磐梯の地形を作った明治時代の巨大災害
青や緑の色をした五色沼のふしぎ
桧原湖のクルーズで山体崩壊の跡と流れ山を観察しよう
磐梯山との絶景コラボが楽しめる「中瀬沼」と、写真映えする「曲沢沼」
磐梯山ゴールドラインで裏磐梯へ。名物山塩ラーメンも味わおう。

山湖台

マナブ:猪苗代から磐梯山へ向かって車で登ってきています。
歴史先生:ここは「磐梯山ゴールドライン」。猪苗代から裏磐梯へ、山を越える爽快な山岳ドライブルートです。1970年(昭和45年)に開通した全長17.6㎞の有料道路ですが、2013年(平成25年)から無料開放されています。
マナブ:ここは冬の間も通れるんですか?
歴史先生:いいえ、磐梯山は積雪の多い山です。11月上旬から4月下旬くらいまで、かなり長期間閉鎖されます。この道路はアルツ磐梯スキー場のゲレンデを突っ切るように走っているんですよ。
マナブ:そうか、冬はスキー場になるんだ。南斜面なのにスキー場ができるということは十分な積雪がある証拠ですね。

歴史先生:最初の展望台は山湖台(地図 ❶)です。
マナブ:ここからは猪苗代湖がよく見えますね。


山湖台から猪苗代湖を眺める
マナブ:山湖台からすぐのところにまた展望台がありますよ。
歴史先生:ここは滑滝展望台(地図 ❷)と呼ばれています。

滑滝展望台から見る磐梯山も美しい
マナブ:滝が見えるんですか?
歴史先生:下の谷の方に滝があるんですが、今日は水量が少ないのか、あるいは伸びた草に隠れているのか、見ることができないようです。
マナブ:その代わり、磐梯山、そして猪苗代湖の眺めがいいですね。
歴史先生:磐梯山にもちょうど初雪が降って、紅葉と雪化粧が見事なコントラストを描いています。

滑滝展望台から見た猪苗代湖

マナブ:さて、峠を越えて下り坂が増えてきました。ここからは裏磐梯、ですね?
歴史先生:はい。裏磐梯の中心地、五色沼自然探勝路の西側の入口のあたりに車を停めましょう。飲食店やお土産店がたくさんあって、桧原湖の遊覧船乗り場もあります。今夜泊まる予定の「裏磐梯レイクリゾート 五色の森」もここにありますよ。

裏磐梯の中心地に並ぶ飲食店・お土産店

裏磐梯レイクリゾート 五色の森
歴史先生:これから「五色沼自然探勝路」を歩きます。
マナブ:その前にちょっと腹ごしらえ、しませんか?

桧原湖レストハウス
桧原湖レストハウス むらびと食堂
〒969-2701 福島県耶麻郡北塩原村檜原湯平山1171−19
11:00~14:30、冬季休業
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
https://www.instagram.com/murabito_ogawa_no_tochan/
歴史先生:ここの名物は「山塩ラーメン」。
マナブ:初めて聞く名前ですが。
歴史先生:ここから西へ少し行った山間に大塩裏磐梯温泉、というところがあるのですが、文字通り塩を含んだしょっぱい温泉なんです。その温泉水を炊いて生成したのが「山塩」。
マナブ:それを使った塩ラーメン、ということですね。

山塩ラーメン
歴史先生:透明に近くて口当たりの柔らかいスープ。でもしっかりと旨味が感じられる。天然のミネラルもたっぷり入っています。
マナブ:いいですね、それにしましょう。
湖沼だらけの裏磐梯の地形を作った明治時代の巨大災害

中瀬沼から見た磐梯山

歴史先生:では五色沼を歩く前に、この地形がどうやってできたのか、考えてみましょう。裏磐梯の地図をパッと見て、どう感じますか?
マナブ:まずは湖とか沼が非常に多いですね。それから、山の中なのに比較的平坦な感じもします。
歴史先生:そうですよね。ところで、猪苗代湖がどうやってできたかを以前お話ししましたが、覚えていますか?

マナブ:はい、猪苗代湖の東西の断層がずれて盛り上がり、真ん中が陥没。盆地になった。そこへ磐梯山が山体崩壊を起こして盆地の出口を堰き止める形になって、水がたまったのが猪苗代湖。
歴史先生:はい、大正解です。約5万年前の磐梯山南側の大規模な山体崩壊によるものでしたね。それと同じようなことが、今度は磐梯山の北側で起きたんです。
マナブ:また山体崩壊ですか。いつ頃のことなんでしょう?
歴史先生:それがほんの最近。1888年(明治21年)7月15日のことなんです。
マナブ:それはかなり近い。ということは、たくさん記録も残っている。
歴史先生:そうなんです。近代になってからの山体崩壊の記録として、世界中の研究者から「磐梯式噴火」と呼ばれ、研究対象として注目されてきました。
マナブ:山体崩壊ってすごい言葉ですが、山が崩れてしまうこと、ですよね?
歴史先生:磐梯山の場合、水蒸気噴火がまずは起きて、それにともなって山体が崩壊しました。崩れた山の土石流は「岩なだれ(または岩屑なだれ)」と呼ばれ、火砕流とは違ってマグマ物質や水をほとんど含まない状態で押し寄せます。
マナブ:木々をなぎ倒して、すべてを埋め尽くしてしまう。
歴史先生:そうです。通り過ぎた後には「流れ山」と呼ばれる小さな丘がいくつも残されます。今でもその地形を見ることができます。
マナブ:そのころにはこのあたりにも人が住んでいたんじゃないですか?
歴史先生:はい、不幸にも477名もの方がこの噴火で命を落とされました。

マナブ:この地形図を見ると、崩れた山の土砂の流れがよくわかりますね。
歴史先生:大量の土砂が谷を埋め、川を堰き止めて、平坦な土地とたくさんの湖沼を生んだんです。磐梯山と裏磐梯の特殊な地形は「磐梯山ジオパーク」に指定されています。
青や緑の色をした五色沼のふしぎ

五色沼入口にある裏磐梯物産館。この店内を通り抜けると五色沼自然探勝路につながる。

マナブ:さて、いよいよ五色沼自然探勝路(地図 ❸)を歩きます。
歴史先生:長さはおよそ3.6㎞。東西に伸びるハイキングコースです。
マナブ:普通の服装や靴でも行けますか?
歴史先生:舗装はされていない土の道ですが、比較的整備されています。毘沙門沼付近のルート内のほんの一部ですが、少しごつごつしたところもありますので、ハイヒールやサンダルだと厳しいかもしれません。スニーカー履きであれば、上は普段の服装でOKです。

五色沼自然探勝路

一部には木の根や岩で歩きにくいところもある
歴史先生:多くの観光客が歩いているのでおそらく大丈夫かとは思いますが、季節によっては熊の出没の可能性のある地域です。熊鈴をつけて歩く人もいるようです。
マナブ:3.6㎞というとかなりありますが、帰りも同じ道を戻ってくるんでしょうか?
歴史先生:いえ、帰りはバスを利用して、西側の入口に戻ってきます。東西に入口があるのでどちらから入って歩き始めてもいいのですが、西側から入った方が若干、下り坂が多くなって歩くのが楽です。では出発しましょう。


母沼
マナブ:物産館を抜けると、さっそく両側に沼が見えてきました。
歴史先生:右側に見えるのが母沼。
マナブ:母沼、ということは父沼もある?
歴史先生:はい、ここから見えませんが、この奥に少し小さめの父沼があります。

柳沼
歴史先生:左側に見えるのが柳沼。
マナブ:空の青色が映ってきれいです。
歴史先生:母沼、柳沼の水は通常の川の水とほぼ同じです。


青沼
歴史先生:さて、そろそろ前半のハイライト地区に入ってきました。ほら、左側の沼、これが「青沼」です。
マナブ:青い! これはきれいですね。なぜこんな色をしてるんですか?
歴史先生:磐梯山が崩れたあたりに「銅沼」という沼があるのですが、そこにつながる水系でできた沼です。この水系の水は酸性度が高く、カルシウムと硫酸イオンに富んでいます。そのためプランクトンは住めませんが、底にはコケが群落を作っているそうです。青く見えるのは水中のケイ酸アルミニウムの微粒子が波長の短い青色の太陽光を散乱させているから、なんだそうです。
マナブ:へぇー、そういう科学的な分析がされているんですね。
歴史先生:青沼からしばらく進んで小さな沢を渡ると右側へ道があります。行ってみましょう。

るり沼展望デッキ

るり沼
マナブ:あ、また青い色をした沼が見えてきました。
歴史先生:これは「るり沼」。瑠璃(るり)色をしているからそう呼ばれています。
マナブ:ここも先ほどの青沼と同じ銅沼の水系?
歴史先生:そのとおりです。この沼の特徴は、背後に磐梯山が見えること。
マナブ:あ、南側からみると富士山のような成層火山でしたが、こちらはざっくりとえぐられたような傷跡がありますね。
歴史先生:はい、そうなんです。あれが山体崩壊の跡。あれだけの土砂がドドーンとこのあたりを埋め尽くしたんですね。
マナブ:すごい迫力を感じます。

るり池から見える山体崩壊の跡

木々の間から美しい湖沼が見える

歴史先生:では次に進みましょう。正面の木々の間からまた青い沼が見えてきています。
マナブ:きれいですね。

弁天沼
歴史先生:こちらは弁天沼。五色沼の中で2番目に大きな沼です。
マナブ:ここも水が青いですね。同じく銅沼の水系?
歴史先生:そのとおりです。
マナブ:遠くの山は雪化粧していますね。
歴史先生:ほんとだ。あれは西吾妻山、ですね。

歴史先生:さて、先を急ぎましょう。弁天沼からしばらく歩くと左側には「竜沼」。生い茂った草木でほとんど見えません。

みどろ沼
歴史先生:次は「みどろ沼」。
マナブ:どういう意味なんだろう?
歴史先生:漢字で書くと「深泥沼」です。
マナブ:なるほど。
歴史先生:ここは先ほどまでの銅沼の水系とは違っていて、酸性度は低めです。多様な動植物が見られ、緑がかった色をしています。

赤沼
歴史先生:次に左に見えるのは「赤沼」。
マナブ:うーん、あまり赤くないですね。先ほどの「みどろ沼」と同じような色をしています。
歴史先生:ところが水系は全く違っていて、ここは銅沼の影響を最も受けている強酸性の沼。光によってはもう少し赤く見えることもあるようです。池のふちの土が少し見えていますが、これらも赤く染まっています。
マナブ:そうだったんですね。


毘沙門沼
マナブ:赤沼からしばらく歩くと右側に大きな沼が見えてきました。
歴史先生:これが五色沼の中で最大の「毘沙門沼」。水系としては先ほどの「みどろ沼」と同じです。

広い毘沙門沼

貸しボートもある
マナブ:毘沙門沼は広くておだやか。貸しボートなどもありますね。
歴史先生:ここから丘の上に上がれば五色沼自然探勝路の東側の出口ですが、もう少し歩きませんか?
マナブ:というと?


磐鏡園プロムナード
歴史先生:毘沙門沼の東側に「磐鏡園プロムナード」があって、いい散歩道になっています。

磐鏡園プロムナードから見た磐梯山
マナブ:整備された、いい散歩道でした。
歴史先生:では出口へ向かって坂を上がっていきましょう。

毘沙門沼をバックにした記念写真スポット

裏磐梯ビジターセンター
歴史先生:上がったところには飲食店、お土産店、そして裏磐梯ビジターセンターがあります。
マナブ:ここからバスに乗るんですね。
歴史先生:はい。バスの時刻をチェックして、ここから西側の入口まで戻りましょう。
桧原湖のクルーズで山体崩壊の跡と流れ山を観察しよう

檜原湖遊覧船の券売所

マナブ:さて、バスで五色沼自然探勝路の西側の入口まで戻ってきました。
歴史先生:ここから檜原湖(地図 ❹)の遊覧船が出ています。乗ってみませんか?
マナブ:いいですね。

桧原湖と遊覧船
桧原湖観光船(地図 ❹)
〒969-2701 福島県耶麻郡北塩原村檜原大府平原1172
乗船料1,400円(小学生、シルバー、障がい者、団体などの割引あり)
10:00~15:30(5月上旬~11月上旬の運行)
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
https://www.lakeresort.jp/cruise/
マナブ:桧原湖、けっこう広そうですね。
歴史先生:広さでいえば猪苗代湖の1/10程度。でも全国では28位の広さを持っています。
マナブ:そんな湖が明治以降にできたなんて、ふしぎな感じがします。

広い船内
マナブ:出航しました。船内は広いですね。
歴史先生:はい、裏磐梯レイクリゾートが運営する大型船です。

出港後、後ろ側に磐梯山が見える
歴史先生:後ろのデッキへ行きましょう。出港後、しばらくは磐梯山がよく見えます。
マナブ:ざっくり削られた山体崩壊の跡が見えますね。


多くの小島がある
マナブ:桧原湖には小島がたくさんありますね。それらがとてもかわいい。
歴史先生:なぜそんな地形なのか、わかりますか?
マナブ:えっ? あ、そうだ、「流れ山」。
歴史先生:大正解です。山体崩壊で流れてきた岩や土砂が作った流れ山。これが湖面から顔をだしています。

遊覧を終えて桟橋へ戻る
歴史先生:さて、そろそろ下船の時間です。
マナブ:山体崩壊の跡を見て、たくさんの島と紅葉を愛でる約35分間の船旅。楽しかったなぁ。
磐梯山との絶景コラボが楽しめる「中瀬沼」と、写真映えする「曲沢沼」

裏磐梯サイトステーション 森の駅

中瀬沼探勝路(地図 ❺)
(裏磐梯サイトステーション 森の駅)
入場無料
9:00~17:00、水曜休
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
歴史先生:では次に、代表的な美しい沼を2つ、巡りましょう。まずは「中瀬沼」。「裏磐梯サイトステーション 森の駅」という立派な施設をベースに散策します。

裏磐梯サイトステーション 森の駅前の庭

雪を被った磐梯山の山容はまるでマッターホルン?
マナブ:ここから見る磐梯山は素晴らしい。雪を被ったところが特にいいですね。
歴史先生:ここから中瀬沼まで探勝路を歩きます。ここは五色沼と違って、他に歩いている人がとても少ない。熊に遭遇する可能性もあるので、熊鈴、または携帯で音楽をガンガン鳴らして、熊に私たちの存在を知らせながら歩きましょう。

中瀬沼探勝路

中瀬沼 展望台
マナブ:道の奥に、あずま屋のようなものが見えてきました。
歴史先生:あそこが目的地、中瀬沼の展望台です。

中瀬沼 展望台
マナブ:ちょっと高くなって視界の開ける場所ですね。
歴史先生:なぜここだけ高くなってるのか、わかりますか?
マナブ:ひょっとして、これも流れ山?
歴史先生:はい、そのとおりです。流れ山の上に登りましょう。

展望台からの眺め

磐梯山
マナブ:複雑な形をした沼の向こうに、雄大な磐梯山が見えています。これはいい景色だ。
歴史先生:この展望台からは人工物が何も見えない、というのもいいところです。
マナブ:たしかに。

レンゲ沼
歴史先生:帰り道は美しいレンゲ沼のほとりを通りましょう。
マナブ:今日は風がなく、湖面が鏡のようですね。紅葉も映えて、素敵です。
歴史先生:さて、裏磐梯サイトステーション 森の駅からもう少し奥までドライブしましょう。

曲沢沼の手前の道路脇に車が数台止められるスペースがある

曲沢沼(地図 ❻)
〒969-2701 福島県耶麻郡北塩原村檜原曽原山
入場自由
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
https://www.urabandai-inf.com/?page_id=29424
マナブ:さて、曲沢沼という美しい沼に来ています。車は手前の道路脇に停めました。
歴史先生:ここはとても小さな沼で、駐車場やトイレもありませんが、写真愛好家の間で有名な場所なんです。今日もカメラを持った方が何人かいらっしゃっていますね。

夕方の曲沢沼

昼間の曲沢沼
マナブ:それ、わかる気がします。丸いやわらかな丘の形。それらが水面に映り込んで、何とも言えないかわいらしい絵になっています。
歴史先生:手前にある大沢沼も人気があります。このあたり、美しい湖沼がたくさんありますから、お気に入りの沼にはまるのも楽しそうですね。
マナブ:沼だけに(笑)。
歴史先生:裏磐梯、いかがでしたか?
マナブ:いやー、すばらしい。こんな湖と沼の続く美しい風景なんて、唯一無二、日本には他にないんじゃないですか? で、それが磐梯山の大災害によって近年できたものだなんて驚きです。大自然の脅威をまざまざと見せつけられました。
