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登場人物:
・マナブ: IT業界ビジネスマン。最近、歴史に興味を持つようになり、ただいま勉強中。
・歴史先生:歴史に詳しい街歩きの達人。マナブと一緒に旅をする。
11月の酉の日は「酉の市」へ行こう!

かつては武蔵国の中心であった府中の大國魂神社

新宿歌舞伎町のとなりにあるオアシス:花園神社

大混雑の鷲神社への賢いアクセス方法とは

11月の酉の日は「酉の市」へ行こう!

 

酉の市では多くの提灯が奉納される


マナブ:さて、今日はどこへ行きますか?


歴史先生:今日は十二支でいうと何の日かご存じでしょうか?


マナブ:年には干支(えと)がありますが、日にもあるんですか?


歴史先生:はい、あります。今日は「酉(とり)の日」なんです。12日で1周するようになってるんですよ。


マナブ:で、その酉の日がどうしました?


歴史先生:毎年11月の酉の日、この日には酉の市が行われるんです。


マナブ:あ、それ聞いたことがある。


歴史先生:12日毎に来ますから、11月中に年によって2回または3回、行われます。


マナブ:たしか熊手とかを酉の市で会社に買ってきた人がいたような。


歴史先生:そうそう、それです。今日は関東三大酉の市と言われるお祭りを1日で見に行きましょう。


マナブ:えっ? 関東三大、というとかなりの移動距離になるのでは? もうお昼すぎですよ。


歴史先生:それがそうでもないんです。全部東京都。午後から出ても十分回れます。


マナブ:そうなんですか。


歴史先生:では最初の酉の市、まずは府中に行きましょう。


かつては武蔵国の中心であった府中の大國魂神社

 

大國魂神社の酉の市



マナブ:京王線に乗って府中駅で降りました。わかりました、まず最初の訪問地は大國魂神社(おおくにたまじんじゃ)ですね。


歴史先生:はい、そうです。「府中」という名前が示すように、ここは武蔵の国の国府があった場所なんです。8世紀初めごろ、奈良時代が始まるころからここは国府として栄えました。大國魂神社は国府の中心施設である国衙(こくが)にあった斎場を起源としています。


マナブ:あ、それで府中という名前なんだ。


歴史先生:祭神は大國魂大神(おおくにたまのおおかみ)。この神様は大国主命(おおくにぬしのみこと)と同一なんです。


マナブ:えっ? そうなんですか。知らなかった。


歴史先生:大國魂大神は武蔵の国の人たちに衣食住や医療などを伝え、武蔵の国の守護神とされています。


マナブ:ということは出雲の一族がここに移り住んで、彼らが持っていた進んだ技術をここ武蔵の人たちに伝えたとか? で、その出雲の神様を祀った?


歴史先生:そのあたりははっきりとはわかりません。古代の歴史のロマン、ということにしておきましょう。


ケヤキ並木通り


マナブ:府中駅を降りると、立派な並木道が続いています。これは大國魂神社の参道?


歴史先生:はい、そうです。「馬場大門のケヤキ並木」と呼ばれています。元々は1062年に源頼義、義家親子が前九年の役の戦勝御礼としてケヤキの苗木1,000本を寄進したことに始まります。


マナブ:わぁ、並木にも1,000年の歴史があるんだ。


歴史先生:そして今の並木ですが、徳川家康が関ケ原、大坂城で戦勝したことの御礼として馬場を作り、今のような形にしたと言われています。その時のケヤキが今でもまだ数本残っているそうです。国の天然記念物として大切に保護されています。


マナブ:源氏系の武将たちから崇敬されているんですね。


歴史先生:はい、そのとおり。源頼朝もここで政子の安産祈願をおこなっており、社殿の造営もしているんですよ。


大國魂神社 大鳥居付近にはたくさんの露店が並ぶ


大國魂神社(地図 ❶)

〒183-0023 東京都府中市宮町3丁目1

境内自由

6:30-17:00、無休

(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)

https://www.ookunitamajinja.or.jp/


マナブ:いやー、これはすごい人だ。前に進むだけでも大変。


歴史先生:たしかに、すごい人ですね。


マナブ:これで本殿までたどり着くかなぁ。


歴史先生:あ、そうでした。実はこれ、大國魂神社のお祭りというよりは、その境内の中の摂社である大鷲(おおとり)神社のお祭りなんです。したがって、みんなが目指しているのは本殿ではなくて、右側にある大鷲神社。


マナブ:そうなんですか。摂社なのにこのお祭りの規模、というのもすごい。


見事な装飾の熊手が並ぶ


マナブ:参道の両側には熊手を売るお店がずらりと並んでいます。


歴史先生:とても豪華できれいですね。購入した人にはお店の人から独特の掛け声で三本締めがなされます。


マナブ:たしかに。あっちこっちから威勢の良い掛け声が聞こえます。


歴史先生:これは契約の成立を祝って神様に誓約する儀式なんだそうです。


マナブ:大鷲神社には長ーい列ができています。皆さんお参りされるんですよね。


歴史先生:そうですね。これを待っていると大変な時間がかかるので、私たちは次へ行きましょうか。


マナブ:はい、そうしましょう。


新宿歌舞伎町のとなりにあるオアシス:花園神社


新宿花園神社の酉の市では多くの提灯が奉納される



マナブ:再び京王線に乗って、新宿まで戻ってきました。


歴史先生:2つめの酉の市は新宿の花園神社です。


マナブ:あ、歌舞伎町の近くにある小さな神社。


歴史先生:そうですね。ビルに囲まれた都会のオアシスのような場所。


マナブ:境内は狭かったような気がしますが。そこで大きなお祭りがされているんですか?


歴史先生:まずは行ってみましょう。


花園神社(地図 ❷)

〒160-0022 東京都新宿区新宿5丁目17−3

境内自由

(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)

http://hanazono-jinja.or.jp/ 


お祭りの日、靖国通りでは車道の1車線を歩行者に開放している


マナブ:歌舞伎町から花園神社に向かって靖国通りを歩いているのですが、ものすごい数の人です。


歴史先生:歩道には露店がずらりと並んでいますが、ゆっくり買ったり食べたりできる状態ではありません。今日は車道が1車線、歩行者に開放されていますね。それでも人が溢れている感じ。


靖国通り側からの細い参道にも露店が並ぶ


マナブ:靖国通りからの細い参道に入ってきました。いつもは暗くて静かなところで、ただスッと通り過ぎるだけの道なんですが。


歴史先生:両側に露店が出ていて、すごい人。ゆっくりとしか進めませんね。


本殿前に掲げられた提灯


マナブ:境内の中へ入ってきました。うわー、すごい数の提灯。


歴史先生:これは見事ですね。


マナブ:そしてお参りの人の数もすごい。


歴史先生:熊手を売るお店の数もすごいんです。少し回ってみましょう。


熊手を売る店が並ぶ


マナブ:コンパクトな境内の中、迷路のようにお店が入り組んでいます。ほとんどは熊手を売るお店。


歴史先生:場所柄、外国からの観光客の姿も目立ちます。


マナブ:多分、紅葉の時期を狙って日本に来られたのでしょうけど、今日はちょうどいい日でしたね。日本のお祭り、楽しんでいただけると思います。


歴史先生:この花園神社ですが、江戸時代の初めからこのあたりの総鎮守としてあったようです。ちょうど今の伊勢丹百貨店のあたり。しかしその場所が大名の下屋敷になるというので、こちらに引っ越してきたのだとか。


マナブ:ふむふむ。


歴史先生:その時ここは尾張徳川家の下屋敷の庭の一部で、たくさんの花が咲いていたそうです。そこから「花園」という名前で呼ばれるようになりました。


マナブ:正式には違う名前だったんですか。


歴史先生:はい。稲荷神社とか、三光院稲荷、という名称でした。


マナブ:えっ、待ってください。ここってお稲荷さん?


歴史先生:それなのに酉の市をやってるなんて、変ですよね?


マナブ:そう思います。


歴史先生:1965年(昭和40年)に社殿を新しくした時に、末社であった大鳥神社を本社に合祀したので、今では大鳥神社も本殿で祀っているということになったのだとか。


マナブ:そういうことだったんですね。では歴史としては割と浅め。


歴史先生:そうなりますね。


マナブ:そうそう、これまで府中と新宿で「大鳥神社の酉の市」、ということを聞いてきましたが、そもそも「大鳥神社って何? 酉の市って何?」ということの答えをまだ知りません。


歴史先生:では3か所目、今度はもっとも有名な、酉の市の本家とも言える場所に行きますので、そこで解説いたしましょう。


大混雑の鷲神社への賢いアクセス方法とは


鷲神社の夜の風景


マナブ:さて、秋葉原駅からつくばエクスプレスに乗って、すぐの浅草駅に着きました。秋の日は短い。もうすっかり日が暮れています。ここから行くとすると、浅草寺、ではないですよね?


歴史先生:はい、浅草寺ではなくて、もう少し北側に歩いたところにある鷲(おおとり)神社に行きましょう。特に夜がおススメですよ。


マナブ:おっ。今度は名前からして「おおとり」なので、大鳥の神様だけを祀った神社ですね。言わば専門店。


歴史先生:たしかに(笑)。それでいうと大國魂神社とかは百貨店と言えるかもしれませんね。


斜め右方向へ進むと露店が続く


マナブ:つくばエクスプレスが地下を走る、国際通りを北へ進んでいます。徐々に人が増えてきましたね。


歴史先生:国際通りが左にゆるやかにカーブするこの交差点、右斜めに進むと露店が建ち並ぶ通りに入ります。


マナブ:でもあそこの横断幕を見ると、鷲神社への順路は左、って書かれていますね。


鷲神社へ早く行くには左から。露店を楽しむなら右から。


歴史先生:地図で解説しましょう。左側の国際通りを進むと、鷲神社への近道です。参拝される方の列はこちらに並びます。一方で、右側から行くと露店がたくさん出ていて、お祭り気分を味わえます。


マナブ:なるほど。せっかくのお祭りですから、露店のほうを通ってもいいですか?


歴史先生:そうしましょう。


露店がどこまでも続く


マナブ:いやー、こっちへ来たものの、すごい人です。


歴史先生:ゆっくりとしか進めませんね。お祭り気分を楽しみながらゆっくり行きましょう。


鷲神社の境内への入り方


マナブ:ようやく鷲神社に近づいてきました。


歴史先生:先ほどの地図の鷲神社付近の拡大図がこちらになります。今私たちは右側、緑の矢印から近づいています。この通りは鷲神社の裏を通って、となりの長國寺につながっていて、そちら側から鷲神社へ並ばずに入れます。


マナブ:裏道なんですね。


歴史先生:はい。一方、国際通りから行くと、参拝の人たちが長蛇の列を作っています。数十分待ち、1時間待ちもざら、です。


マナブ:では国際通りからは行かない方がいい?


歴史先生:いえ。行列には並ばずに、鷲神社をすぎて長國寺の門から入れば、すぐに入れます。列に並ぶのはあくまで参拝をされる方。見学や熊手を買うだけなら並ぶ必要はありません。


長國寺から鷲神社へ


鷲神社(地図 ❸)

〒111-0031 東京都台東区千束3丁目18−7

境内自由

9:00-17:00、無休

(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)

https://otorisama.or.jp/ 


マナブ:さて、長國寺に入ってきました。うわぁ、もうここからすごい。夢の世界、っていう感じ。


歴史先生:熊手を売るお店がキラキラしてて、まるで別世界でしょ?


マナブ:あっちこっちから三本締めの掛け声が聞こえる。どんどん売れているんですね。


色とりどりの熊手


マナブ:お店の熊手を見ているのですが、すごくカラフルで、細かな装飾が見事。七福神とか、縁起のいいものがたくさん飾られていますね。


歴史先生:どれもとても立派です。特に夜は美しく見えませんか?


マナブ:たしかに。昼間、府中で見たときよりもさらに素敵に見えます。



買った熊手を大切に掲げて通る人も多い


マナブ:そんなに境内は広そうじゃないのに何列にも路地ができていて、ものすごい数のお店が出ています。


歴史先生:これだけの数のお店が商売になってるなんて、相当な数の熊手が売れているんでしょう。


マナブ:どれも高そうですね。


歴史先生:数万円、くらいが一般的なお値段のようです。お店の人と値引き交渉ができて、それも楽しみの1つですが、値切った分、ご祝儀として渡してくるのが粋な買い方なのだとか。


マナブ:いいですねぇ。江戸っ子って感じ。


歴史先生:そしてお店の人たちが大勢で「家内安全・商売繁盛」などの掛け声と共に三本締めをしてくれます。みんな笑顔で店を後にします。お店は儲かり、買った客は来年の福をもらう。お互いにハッピーなビジネスがここにはあります。


国際通りに面した長國寺の入口。国際通りから来たときはここから入るとよい。


マナブ:ところで先ほどの疑問。大鳥神社って、何の神社なんですか?


歴史先生:祭神は天日鷲命(あまのひわしのみこと)と日本武尊(やまとたけるのみこと)、です。おそらく天日鷲命はあまりなじみがないと思いますが。


マナブ:はい、知りません。


歴史先生:天の岩戸にアマテラスが隠れた際、天宇受売命(あまのうずめのみこと)が岩戸の前で裸踊りをしましたよね。この神様はその時に弦(げん)という楽器を弾いていた人で、天の岩戸が開いたときにその楽器の上に鷲が止まったので、これは瑞兆だということになり、「鷲大明神」とか「天日鷲命」と呼ばれるようになりました。


マナブ:天宇受売命は日本初のダンサーで芸能の神様になりましたが、この人は日本初のバイオリニスト?


歴史先生:うーん、少なくとも楽器演奏者の神様にはなっていないみたいです。


マナブ:で、次はヤマトタケル。


歴史先生:はい、ヤマトタケルが東征した際に、今の埼玉県久喜市にある鷲宮神社に立ち寄られて、戦勝祈願したそうです。鷲宮神社は関東最古とも言われる古社。そして戦いに勝って戻ってきた際、武具であった「熊手」を立てかけてお礼参りをされました。その日が11月の酉の日。


マナブ:へぇー。鷲、熊手、酉の日。一気にすべてがつながりました。でもだったら、久喜の鷲宮神社が酉の市の本家のはずでは?


歴史先生:それがですね、鷲宮神社では特に酉の市のお祭りはおこなっていないようなんです。酉の市は足立区花畑の大鳥神社で始まったようです。当初は賑わいを見せていましたが、次第に門前で博打などがされるようになり、江戸幕府がこれを禁止。酉の市の賑わいはその後浅草の鷲神社へと移っていきました。


マナブ:そうだったんですか。江戸の人から見ると少し近くなりましたね。


歴史先生:しかも、鷲神社のおとなりに広がっていたのは、移転してきた新しい吉原でした。


マナブ:あっ。ということは男性たちにとってはお参り以外にもここに来る理由がありますね。


鷲神社の正規の入口。両側の神社の方がお祓いをして下さる。参拝の列に並ぶとここから入れる。


本殿から続く参拝者の列


マナブ:さっきから気になっていたんですが。


歴史先生:何でしょう?


マナブ:鷲神社で酉の市があるのはいいとして、となりの長國寺にまで熊手のお店が溢れているのは、長國寺としては大丈夫なんですか?


歴史先生:いえいえ(笑)、違うんです。実は浅草の酉の市の発祥はむしろ長國寺のほうです。


マナブ:えっ?


長國寺の本堂


歴史先生:長國寺は鷲神社の別当寺だったんです。別当寺というのは神仏習合の時代、神社を管理するために置かれていたお寺です。長國寺は1630年の開山で、一説には石田三成の遺児と言われる日乾上人が開いたとか。ここに鷲大明神(鷲妙見大菩薩)が1771年に移され、この寺は「酉の寺」と呼ばれるようになりました。


マナブ:そうか。お寺のほうの本堂にもお参りの列ができていましたが、それは正しいことだったんですね。


歴史先生:そうなんです。長國寺と鷲神社は一体のものでしたが、明治の神仏分離で分けられただけです。


鷲神社


歴史先生:では名残惜しい気もしますが、これで鷲神社を後にしましょう。今日の関東三大酉の市、いかがでした?


マナブ:いやー、まさか半日ですべて回れるとは思いませんでした。大満足です。特に夜の鷲神社。これは唯一無二の雰囲気ですね。ぜひ皆さん一度は体験していただきたい。


歴史先生:よかったです。


マナブ:今回は関東三大、ということでしたが、京都とかではどこでやってるんですか?


歴史先生:それが、酉の市というのはほぼ関東だけなんです。


マナブ:えっ、そうなんですか。そうか、だから私の地元とかでは聞いたことがなくて、東京で就職してから初めて聞いたような気がするんだ。


歴史先生:実は大鳥神社の総本社は大阪府堺市の大鳥大社なんです。大鳥大社でも酉の市はないんですよ。おそらく、江戸の武家社会の中でヤマトタケルが武神としてあがめられたことが理由ではないか、と言われています。


マナブ:そうでしたか。ありがとうございました。今日はとても貴重な体験ができました。







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