
登場人物:
・マナブ: IT業界ビジネスマン。最近、歴史に興味を持つようになり、ただいま勉強中。
・歴史先生:歴史に詳しい街歩きの達人。マナブと一緒に旅をする。
お茶の水のビル群の中で異彩を放つ:ニコライ堂
やっぱりおかしい? 強烈な違和感をもたらすお茶の水の地形
東京都心にある緑豊かな孔子廟:湯島聖堂
平将門の怨霊を鎮める神田明神と、実はすごい妻恋神社
神田明神とそっくりな地形に建つ、湯島天神
東京に残るおしゃれ度No.1の明治建築:旧岩崎邸庭園
お茶の水のビル群の中で異彩を放つ:ニコライ堂

ニコライ堂

マナブ:今日は湯島に行きます。でも降り立ったのは都営新宿線の小川町駅。湯島からは少し遠くないですか?
歴史先生:湯島に行く前に、お茶の水を縦断して、それから湯島へ入りましょう。
マナブ:なるほど、ではスタートしましょう。

小川町交差点から北へ
マナブ:小川町交差点から北へ坂を登っていきます。
歴史先生:今日は歴史的スポットだけではなく、地形にも注目しておいてくださいね。まずは坂を登っていくことを記憶してください。
マナブ:東京の都心って、意外とデコボコなんですよね。
歴史先生:はい、それが歴史スポットにも大いに関係してきます。

太田姫稲荷神社
太田姫稲荷神社 (地図 ❶)
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1丁目2−3
境内自由
マナブ:坂を登ったところで左に折れてちょっと寄り道。太田姫稲荷神社、というこじんまりした神社に来ました。
歴史先生:東京で「太田」というと何か思いつきませんか?
マナブ:えーっと、「大田区」。
歴史先生:あれは戦後間もない1947年(昭和22年)、大森区と蒲田区が合併した時に、「大」と「田」を1字ずつ取ったものなんです。
マナブ:えっ? 大森&蒲田、で大田区だったんですか。
歴史先生:ほかに思いつく「太田」は?
マナブ:えーっとほかには、太田道灌とか?
歴史先生:はい、そうですよね。ところで少し時代は古くなりますが、9世紀の初めの平安時代、小野篁(おののたかむら)という有名な学者がいました。彼が今の鳥取県から船で海に出たところ大しけに会い、舳先のところでお経をあげていたそうです。すると波間に翁が現れ、「わが像を 祀れば命を助け、また疱瘡(天然痘)にかかることもないであろう」、と告げました。
マナブ:それはありがたいお話ですが。
歴史先生:京都に戻った小野篁はさっそく翁の像を彫り、京都の南の一口(「ひとくち」と書いて「いもあらい」と読む)に一口稲荷神社を建て、その像を祀りました。
マナブ:ここまでは9世紀のお話ですね。
歴史先生:はい。さて、時代は下って15世紀の室町時代の江戸。ここに城を築いた太田道灌でしたが、最愛の娘が疱瘡にかかってしまいます。すでに手の施しようがなく絶望していると、一口稲荷の話を聞き及び、急ぎ京都に使いを出して祈祷をしてもらいました。すると娘はすぐに快復。これはありがたいということになり、江戸城本丸に稲荷神社を建て、娘と共に深く敬拝したそうで す。
マナブ:へぇー、すごい力だ。
歴史先生:その後何度か場所を移されて、今に至ります。
マナブ:それで「太田姫」という名前なんですね。納得しました。

東京復活大聖堂(ニコライ堂)(国指定重要文化財)
東京復活大聖堂(ニコライ堂)(地図 ❷)
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4丁目1−3
拝観300円
13:00-16:00(4~9月)、13:00-15:30(10~3月)、月曜休
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
マナブ:元の道に戻り、御茶ノ水駅の方へ歩いていきます。
歴史先生:左側に大きなドームが見えてきました。
マナブ:これはたしか「ニコライ堂」って呼ばれている建物ですよね。
歴史先生:何の建物かご存じですか?
マナブ:いえ。えーっと教会、ですかね。
歴史先生:はい、キリスト教の一派に「正教会」というのがあるのですが、その日本の総本山になります。
マナブ:ロシア正教会ですね。
歴史先生:えーっと「正教会」が正しい名称です。それに各地域の名前がついて、日本正教会とか、ロシア正教会とか言われます。でもロシアが代名詞のように言われているのも事実で、ロシアには1億人近い信者がいるとされています。
マナブ:東方正教会っていうのも聞いたことがあります。
歴史先生:はい、それはロシア正教会の別名です。ヨーロッパから見て東の方にありますので。

東京復活大聖堂
歴史先生:では中へ入ってみましょう。ここは13時から16時(10~3月は15:30)までの短時間しか開いていませんので、訪問を計画される方は要チェックです。
マナブ:中の写真は撮影できませんが、比較的簡素でシックな感じ。ただし正面の祭壇は金で作られていて、まばゆいばかりの光を放っていました。
歴史先生:この大聖堂ですが、明治の初め、1872年に聖ニコライがロシアから日本に渡り、正教会の教えを広めるためにここの土地を購入したことに始まります。
マナブ:やっぱりロシアの人。
マナブ:とても立派な大聖堂ですが、正教会の教えは日本で広まったんでしょ うか?
歴史先生:いえ、正教会は苦難の道を歩みます。まずは1904-1905年の日露戦争。ロシアに対する日本人の感情は最悪のものでした。さらには1912年のロシア革命によって共産主義国家が誕生し、ロシア正教会は新政府から迫害され、日本正教会はロシア本国からの支援を失います。そこへ1923年の関東大震災。大聖堂は崩れ、焼失してしまいました。今の建物は1929年に復興したもので、国の重要文化財です。
マナブ:短期間の間に、これでもか、という試練があったわけですね。
歴史先生:それだけにとどまらず、今度は第二次世界大戦。終戦時にソ連が満州に攻め込み、北方領土を奪うなど、ロシアに対する感情はますます悪化していきました。
マナブ:そうか。なかなか布教には至らなかったでしょうね。
歴史先生:その後も米ソ冷戦、アフガン侵攻、近年ではウクライナ侵攻と、ロシアに対する日本人の感情はなかなか上向きません。布教も限定的にならざるを得ないですね。
やっぱりおかしい? 強烈な違和感をもたらすお茶の水の地形

聖橋から見た丸の内線

マナブ:御茶ノ水駅のところへやってきました。今、聖橋を渡っています。ここからは丸の内線が一瞬地上に顔を出すところが見られるんですよね。
歴史先生:そうですね。ところでマナブさん、普通、川の流れているのは谷、それとも丘?
マナブ:谷、です。
歴史先生:さっき小川町の駅から坂を登ってきましたね。聖橋の手前も上り坂です。坂を登った丘の上に川があるなんて、変じゃないですか?
マナブ:たしかにそうだ。

歴史先生:ではこのあたりの地形図を見てみましょう。何か気づきますか?
マナブ:あっ、川の流れが明らかにおかしい。谷の方を流れるのが普通なのに、丘を突っ切って流れています。そうか、これって人工的に作ったもの?
歴史先生:そうなんです。御茶ノ水駅のところにある深い谷は、江戸城を作る際に人工的に作った堀なんです。
マナブ:ということは人力でこれを掘った?
歴史先生:まさか、と言いたいですが、そうなんです。四谷から市ヶ谷、飯田橋、お茶の水と電車に乗ってみると、外堀の中を電車が走っているのが良くわかります。これ、人力で掘ったんです。
マナブ:うわー、ものすごい土木工事ですね。普段何気なく通っているところですが、とてつもない大遺跡の中に私たちは 住んでるんだ。
歴史先生:そういうことになります。江戸・東京って、意外と面白いでしょ?
マナブ:あらためてそう思いました。
東京都心にある緑豊かな孔子廟:湯島聖堂

湯島聖堂 仰高門

湯島聖堂 (地図 ❸)
〒113-0034 東京都文京区湯島1丁目4−25
境内自由
9:30-17:00(冬季は16:00まで)
大成殿公開は土日祝の10:00から閉門まで
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
