立山杉の巨木が静かに眠る森:美女平を歩いてみる
美女平から弥陀ヶ原へ。約1,000m登るバス路線。
崩れた地形の大パノラマ:立山カルデラ展望台
弥陀ケ原から室堂ターミナルへの絶景高原バス旅
立山杉の巨木が静かに眠る 森:美女平を歩いてみる

立山ケーブルカー

マナブ:さて、称名滝の興奮がまだ続いていますが、ここ立山駅からいよいよ立山黒部アルペンルートへ入っていきます。
歴史先生:先ほど買ったチケットを見せて、立山ケーブルカーに乗りましょう。チケットを買う時に予約した15:00発の便です。
立山ケーブルカー(地図 ❸)
運賃1,090円
距離1.3㎞、所要7分
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
https://www.alpen-route.com/enjoy_navi/vehicles/
マナブ:今の時間、ケーブルカーは下りて来る人でいっぱい。逆に今から登っていく人は珍しいんでしょうね、15時発のこの便には私たち以外には2人しかいないようです。
歴史先生:このケーブルカーの車体、よく見てください。乗客が乗る客車の下に大きな貨物を乗せる荷台がついています。これはこのケーブルカーが元々は資材運搬用だったことの名残り。今でもこれで資材を運んでいます。
マナブ:運転手さんが荷台の前の運転席にいますね。

空いている時は運転席に横に立って景色を楽しもう
マナブ:さて、出発です。上りのほうは運転手さんは普通に運転席に座ります。
歴史先生:立山ケーブルカーは半分外、半分トンネル、といった感じ。右側に常願寺川の谷を見ながら立山駅から美女平駅までの500mの標高差を7分で一気に上ります。

中間地点で下りのケーブルカーとすれ違う
マナブ:トンネルの手前で、下りのケーブルカーとすれ違いました。

美女平駅が見えてきた
歴史先生:そろそろ美女平駅です。この最後の部分が一番急勾配で、29度の角度を上っていきます。このあたり、チラッと「材木石」というのが見られます。このあたりは柱状節理で柱状に割れた溶結凝灰岩がごろごろしていて、それが材木のように見えることから名づけられました。
マナブ:柱状節理があるということは、そこに火山活動があったという証拠ですね。
歴史先生:そうなんです。立山信仰の話の中では、昔は材木の階段だったのが、女人禁制にも関わらず3人の女性がここを登り始めたために、神の怒りに触れて材木が石に変わった、という言い伝えになっています。
マナブ:おもしろいですね。
歴史先生:ケーブルカーではなく、歩いて上る登山道は「材木坂」と呼ばれています。かなり険しくて危険なので、一般の人はやめておいた方がよさそうです。

美女平駅

マナブ:美女平駅(地図 ❹)に着きました。
歴史先生:美女平駅にもコインロッカーがあります。ここに荷物を置いて、美女平を散策いたしましょう。

美女杉は美女平駅のすぐ隣にある

美女杉にまつわる物語を読む人たち
歴史先生:さぁ、駅を出てすぐ隣にあるのが「美女杉」です。
マナブ:どうして美女杉っていう名前になったんですか? 姿が美しいから?
歴史先生:いいえ。これには佐伯有頼少年の伝承があります。彼には美しい許婚者の娘さんがいました。でも彼は立山に入ってから、その開山に一生を捧げる決心をしましたよね。
マナブ:そうでした。
歴史先生:娘は立山まで彼を追いかけてきたのですが、開山するまで山を下りることはできないと、娘を追い返します。娘はここ美女平まで来て、この杉の木に「美しき御山の杉よ 心あらば 我がひそかなる祈り 聞きしや」と祈りました。
マナブ:で、その願いは叶ったんですか?
歴史先生:はい。2人はその後、めでたく結ばれました。その伝承を基に、この杉にこの句を3度唱えれば恋が成就する、と言われるようになったんです。

遊歩道入口

遊歩道のマップ
マナブ:バスが止まっている広い場所の隣に、遊歩道の入口がありました。ここから入っていきます。

歴史先生:ちょっと地形図も合わせて見ていただきたいのですが、ここは割と平坦な大地です。そこに何本か川が流れていて、それらが谷を作っています。
マナブ:ふむふむ。
歴史先生:遊歩道に入ってすぐ、谷があります。ここは急な階段の上り下りがあります。
マナブ:ほんとだ、地形図でみるとよくわかります。
歴史先生:それを上ると急な崖が落ち込んでいる。眺めがいいですが危険なので近寄らない方がいいでしょう。
マナブ:わかりました。
歴史先生:今回は一番短いコース(散策コース)を行きます。崖のすぐあとの分かれ道を左に行って、内回りコースを歩きますが、「おんば杉」のところで再び沢を渡って、バスが通る道に出ます。そこからはバス道を歩いて美女平駅に戻ります。
マナブ:バス道を歩くって危険じゃないですか?
歴史先生:バスの運転手さんたちは慣れているし、一般の車が来ないので、それほど危険は感じませんが、でも歩道はないし、カーブも多いので、歩行者も十分に気を付けて歩いたほうがいいでしょう。

まずは鉄製の急な階段を下りる

沢に滑り落ちないよう足元に注意して進む

沢を渡ったら今度は急な上り坂
マナブ:沢を渡りました。
歴史先生:ガイドブックなどを見ていると、美女平の散策は「難易度1」とか、称名滝の遊歩道と同じく一番簡単なように書かれていますが、私は賛成しませんね。ちゃんとすべりにくいトレッキングシューズ等が必要ですし、ましてやハイヒールやスカートなどで来れる場所ではありません。
マナブ:たしかに。称名滝のところは普段街に出る格好で問題ないですが、ここは山歩きの格好でないとダメですね。
歴史先生:男女のデートとかで来る場所ではなさそうです。
マナブ:喧嘩になってしまいそうですね。

木の根道を登っていく
マナブ:分かれ道を左に曲がって、散策コース/内回りコースを進んでいます。木の根道をどんどん上がっていく感じです。

だんだんと森が深くなっていく

左右に杉の巨木が増えてきた
マナブ:だんだんと木が大きくなってきたように思います。
歴史先生:そうですね。杉の巨木とブナの木が交互に生えている感じです。

時には倒木が道をふさぐことも
マナブ:あれ。倒木だ。道をふさいでる。
歴史先生:ほんとだ。下をくぐるか、上を越えていくか、しかありません。6月上旬でまだシーズン初めだからでしょうか。遊歩道があまり整備されていないような気がしますね。

再び倒木。この木はまだ軽いので持ち上げて下をくぐることができた。

おんば杉
歴史先生:「おんば杉」という巨木のところを左に曲がると散策コースです。まっすぐ行くと内回りコースになります。散策コースに入れば、ここからバス道まではすぐです。

散策コースからバス道に出たところには「キハダ」の巨木がそびえている
マナブ:ふう、山道からバス道へ出ました。何だかほっとしました。

バス道を歩く

バス道の脇にある「子育て杉」
歴史先生:子育て杉を見ながら、美女平へ戻りましょう。バスに気を付けて。

美女平駅が見えてきた
マナブ:ここにはなぜこんな に杉の巨木が多いんですか?
歴史先生:これらは「立山杉」という種類なんですが、この種の杉の木は傾斜地ではなく平坦なところで育ちやすい。しかも寒さや雪を好みます。標高1,000mの美女平はこれらの条件にぴったりで、ここには立山杉にとって理想的な環境が揃っているんです。
マナブ:なるほど。ガイドブックで見た印象とは違って意外とハードでした。ある程度山に慣れている人には問題ありませんが、高齢の方とかには少し難しいかもしれませんね。
歴史先生:はい、掲載した写真を参考に、皆さんは行くかどうかを決めていただける一助になれば幸いです。
美女平から弥陀ヶ原へ。約1,000m登るバス路線。

美女平から立山高原バスに乗る

マナブ:さて、美女平から「立山高原バス」に乗って、弥陀ヶ原まで行きます。
歴史先生:立山黒部アルペンルートの交通手段では、立山駅から扇沢駅へ向かう東行きのルートは「緑」、逆ルートは「青」で統一されています。覚えておくとよいでしょう。
マナブ:なるほど。
歴史先生:さて、バスの乗り方ですが、ここでもチケットのQRコードを入口で読み取ります。入口の列は2つに分かれていて、「終点室堂まで行く人」(=これがほとんど)と、「途中下車する人」によって列が違います。

美女平駅前からはバスがどんどん発着する。駅の正面には「出迎杉」が立つ。
歴史先生:さて、このバスだけは必ず左側の席を取ってください。左右で眺めが全く違います。
マナブ:今は午後なので席に余裕がありそうです。左側の前の方を取るようにします。

仙洞杉は道路のすぐわきに生えている
歴史先生:さて、バスが出るとすぐにさっき見た「子育て杉」、そして続いて「仙洞杉」の横を通ります。仙洞杉はバスの中でもアナウンスがあります。美女平の中でも最も大きな杉なんだとか。
マナブ:2つとも左側車窓、ですね。

滝見台から見える称名滝
マナブ:今度は「滝見台」というところでバスが一旦止まりました。ゆっくり動きながら遠くから称名滝を見せてくれます。
歴史先生:先ほど近くで見たので「もういいよ」と思うかもしれませんが、1,000mの台地から見ると、滝の上の方が険しいV字峡谷になっているのがよくわかります。あれが前人未到の「称名廊下」です。
マナブ:やっぱり称名滝はすごいなぁ。でも下からだと、滝の上があんなにまっ平で、そこに称名廊下が鋭いV字の谷を作っている、ということはわかりませんでした。

やがて車窓は雪深い弥陀ヶ原へ
マナブ:雪がだんだん増えてきました。このあたりはかなり積もっていますね。
歴史先生:弥陀ヶ原に入ってきました。先ほどの美女平が標高977m、弥陀ヶ原が1930mですから、およそ1,000mの高さをバスは30分ほどで登ってきたことになります。

今晩泊まるホテルが見えてきた。間もなく弥陀ヶ原。
マナブ:さて、間もなく弥陀ヶ原。雪は1m以上、積もっていますよ。

弥陀ケ原バス停

歴史先生:弥陀ヶ原のバス停で下りました。このバス停には小屋のような建物があって、担当の係の人がいるのと、休憩所、トイレなどがあります。

立山荘は弥陀ヶ原バス停すぐ
マナブ:私たちが泊まるホテルはこれ、ですね?
歴史先生:はい。バス停からすぐ、にあります。

立山カルデラ展望台へ通じる遊歩道
歴史先生:立山カルデラ展望台へ通じる遊歩道はホテルのすぐ前から出ています。普段は石畳の整備された歩きやすい道なんですが、今日は10mほど行ったところから先は雪に埋もれていますね。
マナブ:行けそうですか?
歴史先生:行けるとは思いますが、今はガスが出ていて眺望がないと思いますので、明日行ってみましょう。
崩れた地形の大パノラマ:立山カルデラ展望台

翌日は晴天に恵まれた
マナブ:ということで、翌日になりました。今日は素晴らしいお天気。眺望もバッチリのはずです。
歴史先生:そうですね。では早速行ってみましょう。

遊歩道は雪にすっぽりと覆われている
マナブ:えーっと、これはどこが道なんですか?
歴史先生:赤いポールが立っているのが見えますか? あそこが道になっています。
マナブ:地面からはまったくわからないけど、ポールを頼りに進んでみますね。
歴史先生:ここはさすがにスニーカーではだめです。雪が入りにくいハイカットのトレッキングシューズか、またはホテルで貸してくれる長靴で行くといいでしょう。

折れた木が横たわる
マナブ:次の青いポール目指して歩いています。木が激しく折れていますが、雪の重みで折れたのかなぁ?

目印の赤いポールが続く
マナブ:次は赤いポール。ふぅ、息が上がってきました。雪道は足を取られて、体力使いますね。
歴史先生:ここは2,000m近い高地ですので、息が上がるのがいつもより少し早いかもしれませんね。

後ろを振り返ると雄大な大日岳がそびえる

しばらく歩くと柵が見えてきた
マナブ:あれ、柵があります。ここで行き止まり?
歴史先生:いえ、柵に沿って左側にあがる階段がありますので、それを上がります。柵の向こうは断崖絶壁になっていますので気を付けて。
マナブ:階段上りました。あ、ここが展望台ですね。ここまで通常上り20分かかる、というようにどの案内にも書かれていますが、雪道でなかなか思うように進めなかった今日でも15分ほどで着きました。雪がなければ10分かからないと思います。

立山カルデラ展望台


歴史先生:地形図をもう一度見てください。
マナブ:うわぁー、私たちはまさにカルデラの縁の、崖っぷちにいるんですね。
歴史先生:平坦な弥 陀ヶ原がここからストーンと落ちている、ものすごい崩壊があった場所にいるわけです。

立山カルデラの全景

崩れ地形
マナブ:よく見ると、いたるところに崩れたような跡がありますね。

かつて大鳶山・小鳶山があった場所(鳶崩れの跡)
歴史先生:右奥の斜めになっている場所がありますが、あそこが安政の大災害をもたらした鳶崩れの跡です。
マナブ:あそこはかなり大規模に崩れていま すね。

カルデラの谷底を見下ろす
歴史先生:かつては谷底に温泉地があったりしましたが、危険なため今では立ち入り禁止になっています。よく見ると重機が入って堰堤などを作っている現場も小さく見えていますよ。
マナブ:何も知らなくて見てもすごい絶景の展望台だな、と思いますが、立山カルデラが何かを勉強した後で見ると、一味も二味も違います。砂防博物館、行っててよかった。

弥陀ケ原遊歩道は弥陀ヶ原ホテルの脇から始まる

弥陀ケ原遊歩道の入口
歴史先生:さて、道路を挟んで反対側には弥陀ヶ原が広がっていますが、6月上旬はまだ雪の中。
マナブ:遊歩道入口に数mだけ木道が見えています。夏になるとこれがずーっと続くんですね。

赤いポールが遊歩道の位置を示している
歴史先生:はい。今は雪に覆われて、湿原を感じることはできません。今の季節は雄大な大日岳をバックにした広大な弥陀ヶ原の雪景色、を楽しんでください。

大日岳と弥陀ヶ原
弥陀ケ原から室堂ターミナルへの絶景高原バス旅

弥陀ケ原から立山高原バスに乗る
マナブ:弥陀ヶ原のバス停から立山高原バスに乗車します。昨日チェックインの時に、ホテルフロントにて乗車時間を予約してもらいました。
歴史先生:ここから室堂まで20分。さらに約500mの高さを上ります。ここでも絶対左側の席がおススメ、ですよ。

弥陀ケ原
マナブ:ほんとだ。左側の車窓には広大な弥陀ヶ原の景色が広がっています。道を登っていくにつれ、上から弥陀ヶ原を眺めています。

剣岳
歴史先生:さぁ、剣岳が見えてきました。形が特徴的ですよね?
マナブ:なんだか三角、三角になっていて、まるで剣の先がたくさん林立しているよう。
歴史先生:そう、それが名前の由来です。実際に登るルートも超ハード。日本で最も登るのが大変な山の1つと言われています。「蟹の横這い」と呼ばれる難所とか、実に危険な登山ルートでしか登れない、アルピニストの憧れの山なんです。
マナブ:岩峅寺駅で映画の話がありましたよね。地図空白域だった剣山に測量で登った人々の話。
歴史先生:そうです、まさにその話の山です。
マナブ:私にはとても無理そうだ。遠くから見るだけにします。
歴史先生:さぁ、剣岳が見えたらもうすぐ高原バスの終点、室堂ターミナルです。下りる準備をしましょう。

