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白浜 熊野三山_1.jpg
登場人物:
・マナブ: IT業界ビジネスマン。最近、歴史に興味を持つようになり、ただいま勉強中。
・歴史先生:歴史に詳しい街歩きの達人。マナブと一緒に旅をする。
南紀:パンダと世界遺産がもたらす光と影

「紀伊」の名前の由来とは?

太古の昔、紀伊半島で世界最大級のカルデラ噴火が起きていた?

【旅のメモ】南紀ではどこに泊まる?
(1)TAOYA白浜千畳(白浜町)
(2)山水館 川湯みどりや(川湯温泉)


南紀:パンダと世界遺産がもたらす光と影


特急くろしお



マナブ:今日は和歌山県の白浜に来ています。新大阪駅で新幹線から「特急くろしお」に乗り換えて2時間半ほどの旅でした。


歴史先生:白浜は初めてですか?


マナブ:実は数年前、白浜のホテルでの会議に参加したことがあって、それで来ました。


歴史先生:その時は飛行機?


マナブ:はい。羽田から南紀白浜空港へ行く便があるので、それで往復しました。でもその時はほとんど観光などできなかったので、今回は楽しみです。


白浜駅


歴史先生:白浜にはどんな印象を持っていますか?


マナブ:主に関西の人が来るビーチリゾート。そしてパンダ。


歴史先生:そのパンダですが、2023年に3頭、2025年に4頭が中国へ返還されました。


マナブ:返還されたのは日中関係の政治的なことが理由なんでしょうか?


歴史先生:最初に上野動物園にパンダが来た時のことを覚えていますか?


マナブ:はい、すごいブームでした。カンカンとランラン。


歴史先生:あれは1972年、日中国交正常化が達成され、それを記念してそのわずか1か月後、中国から日中友好のシンボルとして貸与されたものでした。


マナブ:「パンダ外交」っていうことばもありますよね。


歴史先生:中国はアメリカ、韓国、ロシア、ドイツ、フランス、マレーシア、インドネシアなど、戦略的にパンダを使った外交を行っています。ところで、元々ジャイアントパンダはワシントン条約で規制されている動物で、中国の外に出すときは期限付きの研究目的で特別な契約がされています。


マナブ:今回はその期限が更新されなかった?


歴史先生:そうですね、契約期間が終わったことによる返還ですが、次の予定が立たないのは政治的な影響もあるのかもしれません。


マナブ:白浜の観光には大打撃ですよね。


歴史先生:でも白浜にはパンダがいなくても魅力がいっぱい。大自然の驚異を間近に感じられる場所ですよ。そして今回は白浜をスタート地点として、紀伊半島の南端を回って、熊野三山へ。いわゆる「南紀」と呼ばれる地域を回ります。


マナブ:熊野三山と言えば、世界遺産になりましたよね。


歴史先生:はい。2004年、「紀伊山地の霊場と参詣道」という世界遺産に登録されました。熊野三山、高野山、吉野・大峰、そしてそれらを結ぶ参詣道が指定されています。


マナブ:「道」が世界遺産になるなんて、珍しいのでは?


歴史先生:そうですね、日本ではここだけ。海外で有名なところではスペイン・フランスにまたがる「サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路」というキリスト教聖地への巡礼の道があります。


マナブ:昔の街道というのは、たとえば東海道などを考えてみると歴史的に重要な道ですが、近代それらは自動車がバンバン走る国道になって、昔の面影が失われていますね。その意味で、熊野古道というのは人が1人通れるだけの山道だから、昔の姿が残っているんでしょうね。


歴史先生:地形的には熊野古道の多くが尾根道、すなわち山の一番高いところを通っています。近代の国道は谷に沿って作られていますから、その地形的な違いも熊野古道が残っている要因だと思われます。


「紀伊」の名前の由来とは?



歴史先生:さて、あらためて紀伊半島の地形図を見てみましょう。何が言えますか?


マナブ:平地が少なくて山が多い。


歴史先生:そうですよね。紀伊半島は日本でも有数の山がちな地域。今回訪れる和歌山県は県全体の8割以上が山地で、海岸線は複雑なリアス海岸が続きます。


マナブ:コメ作りにはあまり適していなさそうですね。


歴史先生:はい、そのため和歌山県の名産といえば・・・


マナブ:みかん。そして梅干し?


歴史先生:そうですね。そういった果樹が主に栽培されています。和歌山は漁業も盛ん。温暖な黒潮が通る豊かな漁場がすぐ近くにあります。


マナブ:しかもリアス海岸で天然の良港が多い。


歴史先生:まさにそうですね。そして和歌山は林業も盛ん。山がちで雨も多いですから、木が良く育ちます。ところで、和歌山県の昔の名前は?


マナブ:「紀伊」、です。


歴史先生:その由来をご存じですか?


マナブ:えっ? 何だろう。あ、さっき「木」がよく育つと言われてましたよね。「木の国」だったりして?


歴史先生:そうなんです。木の国と呼ばれていたのですが、奈良時代の初め、713年に元明天皇が「好字令(こうじれい)」(または「二字佳名の詔(にじかめいのみことのり)」というのを出しました。これは国の名前を縁起の良い2文字で表すように、という通達でした。


マナブ:それで「木」が「紀伊」になった。


歴史先生:そういうことです。


マナブ:「木」じゃ、ちょっと単純すぎますが、「紀伊」だと何となく風格が出ますね。


歴史先生:当時最先端だった中国の文化を取り入れ、それに負けない文明国であることを示すための1つの施策だったものと思われます。


太古の昔、紀伊半島で世界最大級のカルデラ噴火が起きていた?


橋杭岩


歴史先生:紀伊半島は地形的にもとても面白いところ。ここは「南紀熊野ジオパーク」になっています。


マナブ:ジオパークっていうのは全国にいくつかありますよね。


歴史先生:はい、2つのレベルがあって、ユネスコによって指定されている「世界ジオパーク」が10カ所、日本で制定している「日本ジオパーク」が38カ所あります。


マナブ:世界ジオパークはどことどこ?


歴史先生:以下の10カ所です。


アポイ岳

洞爺湖有珠山

糸魚川

伊豆半島

白山手取川

山陰海岸

隠岐

室戸

阿蘇

島原半島


マナブ:なるほど、さすがと思う場所もあれば、よく知らない場所もあります。


歴史先生:2015年からユネスコで始まったプログラムで、世界的には229地域(2024年1月現在)が指定されています。


マナブ:世界遺産は?


歴史先生:世界遺産は1,248地域。


マナブ:だとすると世界ジオパークのほうがより希少性がありますね。


歴史先生:そうですね。ただし世界遺産に比べると新しいプログラムなので、これから数も増えてくることが予想されます。


マナブ:で、南紀熊野ジオパークはどういった特徴があるんでしょう?


歴史先生:この地域ですが、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでいる場所にあたります。深い海の中でプレートが潜り込むことで、大陸側のプレートの端っこが崩れて、そのくずが海のプレートに押されてどんどん陸地に押し上げられてきます。これを「付加体」と言います。


マナブ:ふむふむ。


歴史先生:それが押し上げられると海は浅くなり、そこには砂や泥が堆積していきます。これを「前弧海盆堆積体」と言います。


マナブ:長い名前だ。


歴史先生:それだけであればあまり面白くないのですが、すごいのはここから。1,700万年前ごろからマグマが上昇し、ついに1,400万年前ごろ、この地域で巨大噴火が起きました。


マナブ:紀伊半島で巨大噴火? 聞いたことがない。


歴史先生:熊野カルデラと呼ばれる地域で、世界でも最大級の巨大カルデラ噴火が起きたものと推定されます。



マナブ:紀伊半島でカルデラなんて聞いたことがないのですが、どこにあるんでしょう?


歴史先生:地図を見てください。ちょうど熊野三山のあたり。


マナブ:昔の人は何かそのパワーを感じて神社を作ったんでしょうか?


歴史先生:いいポイントですね。それがなぜか、このあとお話ししましょう。


マナブ:ところで日本の巨大噴火というと阿蘇山が思い浮かびますが、あれはいつ頃ですか?


歴史先生:阿蘇山の噴火は30万年前から9万年前。4回目のAso-4が特に大規模で、それが9万年前です。


マナブ:阿蘇山は9万年前で、熊野は1,400万年前? 桁が3つも違いますね。


歴史先生:そうなんです。もしも1,400万年前にタイムスリップできたとしたら、ここに阿蘇山を超えるような巨大カルデラが見られることでしょう。阿蘇山のカルデラは南北25㎞、東西14㎞。一方で熊野カルデラは南北40㎞、東西20㎞と推定されています。


マナブ:ひゃー、阿蘇山のカルデラより2倍くらい大きい。


歴史先生:でもはるかに昔の噴火のため、その後の隆起や浸食で、もはやカルデラの形はわからなくなりました。


那智の滝


マナブ:そうか、もうカルデラ地形は残っていないんですね。


歴史先生:でも今、私たちが見られるのは、巨大噴火で噴出した「火成岩」。火成岩は浸食に強く、他の土壌が崩れた後も残っています。橋杭岩や那智の滝、といった景勝地は火成岩によるものなんですよ。


マナブ:なるほど、巨大噴火がなかったらこれらの奇岩はできなかったわけか。


歴史先生:奇岩がなければ、それに対する信仰も生まれなかった。


マナブ:あっ! そうか。熊野信仰が生まれたのも、熊野カルデラの巨大噴火があったから。


歴史先生:はい、おそらくそう言っていいと思います。


マナブ:うわぁー、自然と歴史というのは本当につながっていますね。


【旅のメモ】

南紀ではどこに泊まる?


南紀は温泉天国。白浜、勝浦など、有名温泉地が並ぶ。せっかく訪れるなら、それらの温泉も楽しみたい。


(1)TAOYA白浜千畳(白浜町)


リーズナブルな料金で泊まれる、海の見える大型の温泉リゾートホテル。千畳敷の入口にある。



選んだ理由:

立地:白浜町中心部から車で3分ほど。千畳敷の入口にある。

眺望:海の見えるホテル。西側が海なので夕日が期待できる。

設備:建物自体は古いと思われるが、大幅にリノベーションされていて、モダンなデザインになっている。海の見える露天風呂も魅力。

サービス:オールインクルーシブ。アルコールやマッサージチェア、ロビーでの飲食など、すべて宿泊料金に含まれる。

食事:朝・夕食ともバイキング。TAOYAグループのバイキングはどこのホテルでもとても評判が良い。

価格:TAOYAは大江戸温泉物語グループの上位ブランド。同クラスのホテルに比べてリーズナブル。


実際に泊まってみた感想:

・立地:千畳敷まで歩いて3分ほどの好立地。三段壁にも近い。市内からも車があればすぐ。

・6階の和室ツインに泊まったが、その高さからは海が良く見えた。

・朝・夕食のバイキングが他のTAOYAと同様、非常にレベルが高い。1人用の鍋はクエ鍋、すき焼き、カニ鍋など数種類から選ぶことができた。

・夜21時からラウンジで梅うどんが提供されていて人気。これらも一切無料。

・地形的に狭い土地を活用しているため、一番近い第一駐車場はすぐにいっぱいになり、第二、第三駐車場で空きを探す。やや離れたところにあり、ホテルへは交通量のある車道を歩いて戻るので車に注意。同乗者を車寄せでおろして、運転手だけ駐車場に行くのがよい。

・12月に訪問した際にはロビー前のプールのエリアから海に沈む夕日がきれいに見えた。季節によっては夕日は海の方向ではなくなりそう。

・露天風呂はインフィニティ性を謳っているが、実際には海は遠く、「海が見える露天風呂」というほうが正しい。


正面に海が見える明るく開放的なロビー


ロビー横にあるラウンジでは飲食無料


プールエリアから沈む夕日を見る


6階の和室ツインは畳の上にツインベッドがある


部屋からは海とプールエリアが見える


部屋からの夜の眺め


じゃらんのサイト

https://www.jalan.net/yad368406/ 


(2)山水館 川湯みどりや(川湯温泉)

 

川沿いにある、川湯温泉最大のホテル。宿泊者専用の河原の露天風呂が人気。



選んだ理由:

立地:大塔川に沿って並ぶ川湯温泉のホテルの1つ。今回は川湯温泉自体を目的にしていたので、川湯温泉で一番大きく、評判の良いホテルを選んだ。

眺望:川沿いの和室ではなく、反対側の洋室を選び、宿泊代をややセーブした。

設備:建物自体は古いがきれいに管理されているようにみえる。

食事:朝・夕食ともバイキング。夕食時のアユの塩焼きが好評らしい。

価格:川湯温泉の中では一番高いホテルだが、一般的な温泉旅館と比べてそれほど高額ではない。


実際に泊まってみた感想:

・今回の目的は河原に設けられた「仙人風呂」(後述)。そこからは温泉街の中ではやや遠く、歩いて5分ほどかかった。

・このホテルの特徴はホテル独自の露天風呂。男女別の大浴場(1階)から外に出て10段ほどの階段を下りるとそこは河原。石がごろごろしている河原に2つ露天風呂が掘られていて、青空や星空を見ながら入浴できる。特にどちらが男・女ということはないので、他にお客さんがいなければ家族でどちらかに入るのもいいだろう。ただしその場所は食堂や部屋からも見える場所なので、湯あみ着が必要。女性用は全身を覆うような湯あみ着。男性用は腰から下に巻くタイプと、茶色の短パンの2種類。男湯、女湯それぞれに備え付けられていて自由に使える。使用後は浴室内の専用のボックスに入れればよい。

・部屋はやや古さはあるが、きれいに管理されていて清潔感がある。

・外国人スタッフがとても礼儀正しく、感じが良い。

・宿泊客には欧米系の人が多く見られた。


・食事はTAOYAなどと比べると種類が少ないが、それぞれ手作り感があり、1つ1つがおいしい。

・アユの塩焼きはやや小ぶりなサイズだったが、食べ放題なのでほしければ何匹でも食べられる。

・ロビー横のラウンジには飲み物とおつまみが用意されていて自由に使える。


建物のすぐ前は河原。ここに2つの露天風呂が掘られている(写真の湯気の立っている部分)。


洋室ツイン


ロビーラウンジ


冬に来たら絶対に体験したい「仙人風呂」


さて、川湯温泉に泊まった最大の理由は12月~2月のみ現れる「仙人風呂」だ。これは大塔川を堰き止めて作られる25mプール程度の大きさの天然の露天風呂で、川床から湧き上がる熱いお湯に川の冷たい水を引き込んでちょうどよい温度にしたもの。


大塔川と川湯温泉街(奥に見える湯気の立っているところが仙人風呂)


川湯温泉の案内図


仙人風呂


特に土曜日の夜、20~22時はライトアップされ、幻想的な風景が広がる。私たちは土曜日に合わせて訪れた。


仙人風呂のポスター


さて、露店風呂とはいえ、道路からも丸見えの場所であるから裸での入浴は刑法に触れるとの注意書きがある。また更衣室がなく、ロッカーもない。しかも冬の寒い時期。ではどうするか? 以下は私たちの体験なので、参考にしていただきたい。


・川で泳ぎに行くのと同じ感覚で「水着」と「サンダル」を旅行の荷物に入れた。河原は石がごろごろしているので、サンダルは必須。普通の露天風呂とは違い、風呂の中も床面は河原と同様なので、サンダルを履いたまま入るのが良い。

・「山水館 川湯みどりや」の場合、ホテルからはバスタオル・フェイスタオルを無料で貸し出してくれる。私たちはバスタオルのみを借りた。

・ホテルから仙人風呂へは歩いて5分ほど。寒い冬の時期、行きはまだ良いが、風呂上がりで濡れている帰りはどうしたらいいのか? これが課題だった。

・そこで私たちは、水着を中に着て、その上からホテルの浴衣(ゆかた)を着て、その上からコートを羽織って出かけた。ホテルには浴衣を着て行ってもいいか確認をしておいた。

・仙人風呂に着いたら、コートと浴衣を脱いで水着になり、バスタオルを河原に敷いてその上に置いた。(私たちは持って行かなかったが)カメラやスマホなど貴重品を持っていく場合は、入浴中も目を離さないようにすること。

・サンダルを履いたまま、いざ入浴。

・自然に湯が湧き出ているので、やや熱いところ、ややぬるいところもあっておもしろい。全体的には適温で非常に快適だった。

・屋根もなく、壁もない。星がとてもきれいだった。他では味わえない、唯一無二の開放感いっぱいの入浴体験。

・仙人風呂の中ではスマホなどで自撮りをしている人もいた。普通の風呂では見ない光景だ。

・さて、湯から上がると、バスタオルでできるだけ体と水着を拭き、浴衣が濡れないよう水着の上にバスタオルを巻いた。その上から浴衣とコートを着て、ホテルへ戻った。

・風呂で温まっていることもあり、濡れていても帰り道はそれほど寒さを感じなかった。

・使ったバスタオルはホテルのフロントに返却。

・川で泳いだのと同じなので、ホテルに戻ってからあらためて入浴した。

​歴史好きのための観光ガイド
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