お参りする前に「世界遺産 熊野本宮館」で予習しよう
<コラム> 熊野の温泉でよみがえった「小栗判官」の物語
かつて熊野本宮大社が鎮座した大斎原
158段の石段を登って熊野本宮大社をお参りしよう
熊野本宮のおすすめホテル
山水館 川湯みどりや(川湯温泉)
冬に来たら絶対に体験したい「仙人風呂」の入り方
お参りする前に「世界遺産 熊野本宮館」で予習しよう

熊野本宮大社の参道入口

マナブ:新宮から熊野川沿いを車でさかのぼること約40分。熊野本宮大社にやって来ました。
歴史先生:車窓右側にずっと熊野川が見えていましたが、熊野速玉大社から熊野本宮大社までの間は熊 野古道の一部であり、「川の参詣道」として世界遺産になっています。
マナブ:川が世界遺産だなんて、珍しいのでは?
歴史先生:はい、世界でもここだけだと言われています。熊野古道というと山の中の道を想像しますが、山を越えて熊野本宮大社にお参りしたのち、参詣者たちは船に乗って川を下り、次の熊野速玉大社へと移動したんです。
マナブ:なるほど、この川は多くの参詣者たちを乗せた船が行き交いしていたんですね。


マナブ:国道 を北上して熊野本宮大社の入口の鳥居の前に来ましたが、いくつか駐車場がありそうです。
歴史先生:国道右側には「世界遺産 熊野本宮館」という無料の新しい資料館がありますので、ここはぜひ行っていただきたい。反対に国道の左側には「樹の里」という大きなお土産店がありますので、ここも寄りたいですね。どの駐車場も無料です。
マナブ:どっちにしようかな。
歴史先生:ところで、熊野本宮は石段を登ったところにあります。
マナブ:えっ、そうなんですか?
歴史先生:高齢やお怪我などで石段を登るのが難しい方は、本殿裏の坂の上に10数台停め られる小さめの駐車場がありますので、そこを使われるとよいでしょう。 そこからだと段差なくお参りができます(地図参照)。それから、観光シーズン中はこれだけでは足りないので、熊野川の河原にも大きな駐車場ができています。

坂の上の駐車場

熊野川の河原にある駐車場
マナブ:私たちは右側、すなわち世界遺産 熊野本宮館の方の駐車場に停めました。ここで事前学習してからお参りし、帰りにお土産屋さんに寄ろうと思います。

世界遺産 熊野本宮館
世界遺産 熊野本宮館
〒647-1731 和歌山県田辺市本宮町本宮100−1
入館無料
9:00~17:00、無休
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
http://www.city.tanabe.lg.jp/hongukan/
マナブ:きれいな建物ですね。
歴史先生:2009年にできた資料館です。この地方の特産である杉の木材をふんだんに使用しています。

展示スペース
歴史先生:いくつか気になる展示を見ていきましょう。那智に行ったとき、熊野那智参詣曼荼羅を見たのを覚えていますか?
マナブ:はい、あれは面白か った。
歴史先生:熊野本宮大社、熊野速玉大社の参詣曼荼羅もあるんですよ。それらが並べて飾られています。

熊野本宮大社 参詣曼荼羅
マナブ:これはおもしろそう。
歴史先生:まずは熊野本宮大社。あとで詳しくお話しますが、元々は社殿は河原にあったんです。だからこの絵はその頃のもの。
マナブ:熊野川が流れていて、船がたくさんいる。左下にあるのは那智の滝、かな?

川湯温泉、湯の峰温泉が見える
歴史先生:そうでしょうね。滝のすぐ右上、雲の間から川湯温泉が見えています。今日はここに泊まります。その上に見えているのは湯の峰温泉。
マナブ:橋のところ、なんだか茶色の人が車に乗せられて引っ張られていますが。
歴史先生:これは小栗判官(おぐりはんがん)ですね。
マナブ:え?
歴史先生:小栗判官のお話、コラムでまとめてみます。
<コラム> 熊野の温泉でよみがえった「小栗判官」の物語
室町時代の半ば以降、関東では古河公方の足利氏や関東管領の上杉氏などが絶え間ない争いを繰り広げていた。常陸の国の小栗城主の子として生まれた小栗助重(小栗判官)は、足利氏に攻められて落城、三河の国を目指して西へ落ち延びた。
しかしその途中、相模の国の横山氏の謀略により、毒の入った酒を飲まされる。それを不憫に思った横山氏の娘の照子によって何とか一命をとりとめたが、目も見えず、耳も聞こえず、口もきけないという「餓鬼阿弥(がきあみ)状態になってしまった。照子はなんとか小栗判官を助けたいと思っていたところ、熊野本宮にある温泉に浸かればいかなる難病も快復するとの噂を聞き、判官を土車に乗せ、険しい山道を越えて熊野本宮を目指した。
照子と判官はついに熊野本宮、そしてその近くの湯の峰温泉にたどりつき、49日間、湯の峰温泉の「つぼ湯」に浸かって療養したところ、なんと元の元気な小栗判官に戻ることができた。
この話を時宗の開祖・一遍上人が聞き、熊野はやはり「よみがえり」の地であるとの確信を得て、一遍上人や時宗の門徒たちが小栗判官の話を全国に広めていった。
なお、判官が浸かったつぼ湯は現在も残っており、世界遺産に登録されている。
マナブ:そういうことでしたか。絵を見ると茶色の人(=小栗判官)の後ろにお姫様のような人がいますね。これが照子なのでしょう。
歴史先生:鎌倉時代に生きた一遍上人の時宗は、南無阿弥陀仏と唱えれば往生が果たせる、という教えですから、阿弥陀仏のお浄土とされた熊野本宮大社は一遍上人にとって特別な場所だったはずです。彼の熊野参詣に様子は一遍上人絵伝としてその後の布教活動にも使われました。

大斎原の模型(左の大きな川が熊野川、右の小さな川が音無川)

歴史先生:さて、先ほど熊野本宮大社は河原にあったと言いましたが、これがその模型。地図の下の方、大斎原(おおゆのはら)と書かれている場所です。この場所は熊野川に音無川が合流するところ。ここには橋をあえてかけておらず、参拝する人は音無川を濡れながらわたって参拝したそうです。
マナブ:あ、音無川って東京の王子駅のところの川の名前ですよね。そこは熊野の音無川にちなんで名づけられたとか。ここの川でしたか。ところでこの地形を見るとずいぶん川の近くですね。これでは水害に遭いそう。
歴史先生:その通りで、火災、そして水害に何度も遭っています。1889年(明治22年)にも大きな水害があり、多くの社殿が流されてしまいました。そのため残った社殿を1891年(明治24年)に現在の場所、すなわち少し高くなった丘の上に移したのが現在の熊野本宮大社です。

熊野速玉大社 参詣曼荼羅
歴史先生:次は熊野速玉大社の参詣曼荼羅を見てみましょう。
マナブ:これは新宮ですね。あ、阿須賀神社、そして蓬莱山がちゃんとある。白馬に乗ってるのは徐福かも?

阿須賀神社、蓬莱山らしきものも見える
マナブ:ゴトビキ岩に神倉神社。剣を持って駆け下る人の姿もありますね。これは高倉下なのでしょう。

神倉神社付近の絵
かつて熊野本宮大社が鎮座した大斎原

大斎原の鳥居
歴史先生:さぁ、外へ出てみましょう。
マナブ:あ、あの茂みになっているところが大斎原(おおゆのはら)、ですね。
歴史先生:はい。2000年にできた高さ34m、幅42mの日本一の大鳥居が建っています。この地に社殿が建てられたのは紀元前33年。
マナブ:古い。
歴史先生:大斎原にあったイチイの巨木に3つの月が降臨して、「私は家都美御子大神(すさのおのみこと)であり、両側の月は伊邪那美命(いざなみのみこと)と速玉之男大神(はやたまのおのみこと(=イザナギ))である。社殿をつくり、齋き祀れ」と言ったそうです。
マナブ:新宮ではゴトビキ岩に降臨しましたが、ここでは巨木に降臨した、ということなのですね。新宮の方とはなんとなくライバル関係のように見えてきました。
歴史先生:それでは、現在の熊野本宮大社へ行ってみましょう。あ、その前に、あそこにバスが来ていますね。あれは奈良県の橿原市(八木)から和歌山県の新宮市まで行く、日本一長い路線バス、です。
マナブ:どれくらいかかるんでしょう?
歴史先生:八木を朝9:15に出発して、新宮駅前には15:47着。実に6時間半。停留所の数は168個。全長169㎞の山道です。途中、3回の休憩が入ります。
マナブ:まさに現代に熊野詣、の苦行ですね。

日本一長い路線バス
158段の石段を登って熊野本宮大社をお参りしよう

熊野本宮大社の入口の鳥居
熊野本宮大社(地図 ❶)
〒647-1731 和歌山県田辺市本宮町本宮1110
8:00~17:00、無休
(※最新の情報はWebサイト等でご確認ください。)
マナブ:世界遺産 熊野本宮館から国道を横切って、熊野本宮大社の参道入口に来ました。
歴史先生:参道が見えますか? 結構な階段になっています。

参道の石段
マナブ:ほんとだ、これは結構すごいですね。熊野本宮大社は川 のそばだから、割と平坦なイメージで思っていましたが、全然違いました。見ていると年配の方がツアーでたくさんいらっしゃいますが、大変そうですね。
歴史先生:石段は158段あるそうです。

参道の真ん中は神様の通り道
歴史先生:参道の途中に、歩き方の注意が書かれています。神社の鳥居や参道というのは、その真ん中は神様の通り道。参拝者は右端を歩くのがマナーなんです。
マナブ:そうだったんだ。知りませんでした。

もうすぐ終点
マナブ:参道ももうすぐ終わり。社殿が見え始めました。

石段を登り切って左に行ったところに八咫烏の郵便ポストがある

門から中へ入る

八咫烏の注連飾り
マナブ:あ、しめ飾りが八咫烏の形に編んでありますよ。
歴史先生:これはおもしろいですね。

熊野本宮大社 本殿
歴史先生:ご神域に入ってきました。
マナブ:今日も多くの人がお参りをされています。
歴史先生:ここには5つの社殿が横に並んでいます。
マナブ:那智、速玉も同じように横に並んでいましたね。
歴史先生:スサノオ、イザナギ、イザナミ。そしてアマテラス、さらには八百万の神。この5つです。拝殿がありますので、そこからお参りをいたしましょう。

和泉式部の祈願塔
歴史先生:ところで、平安時代の歌人、和泉式部も熊野を参拝した1人。彼女は熊野古道を歩いている途中で、あいにく月のさわりとなったため、「不浄な体になってしまい、熊の参拝できないのが悲しい」という歌を残しました。ところがその夜、熊野の神が夢に現れて、「熊野の神は元々俗塵にまみれている。月のさわりなど全く苦しくない」という歌を詠みました。そのため安心して参拝ができたそうです。

樹の里
マナブ:参拝を終えて下まで降りてきました。樹の里でお土産を見ています。
歴史先生:これで熊野三山をすべて回りましたが、いかがでしたか?
マナブ:那智、速玉も素晴らしかったのですが、本宮はさすが、という感じの雰囲気がありました。特に熊野川の雰囲気がいいですね。山の中なのに広い河原があって、ちょっと別世界な気がしました。昔の人が過酷な旅の果てにここにたどり着く。大変な感激だったでしょうし、ありがたみを感じたことでしょう。交通の発達した今でもここへ来るのは簡単ではありませんが、一生に一度は来ておきたい場所ですね。
歴史先生:さて今夜は川湯温泉に泊まります。ホテルにも専用の河原の露天風呂がありますが、今の時期(12~2月)は仙人風呂がオープンしていますよ。
マナブ:川湯温泉、実はものすごく楽しみにしてきたんです。今からわくわくします。
熊野本宮のおすすめホテル
山水館 川湯みどりや(川湯温泉)
川沿いにある、川湯温泉最大のホテル。宿泊者専用の河原の露天風呂が人気。


選んだ理由:
立地:大塔川に沿って並ぶ川湯温泉のホテルの1つ。今回は川湯温泉自体を目的にしていたので、川湯温泉で一番大きく、評判の良いホテルを選んだ。
眺望:川沿いの和室ではなく、反対側の洋室を選び、宿泊代をややセーブした。
設備:建物自体は古いがきれいに管理されているようにみえる。
食事:朝・夕食ともバイキング。夕食時のアユの塩焼きが好評らしい。
価格:川湯温泉の中では一番宿泊費の高いホテルだが、一般的な温泉旅館と比べてそれほど高額ではない。
実際に泊まってみた感想:
・今回の目的は河原に設けられた「仙人風呂」(後述)。そこからは温泉街の中ではやや遠く、歩いて5分ほどかかった。
・このホテルの特徴はホテル独自の露天風呂。男女別の大浴場(1階)から外に出て10段ほどの階段を下りるとそこは河原。石がごろごろしている河原に2つ露天風呂が掘られていて、青空や星空を見ながら入浴できる。特にどちらが男・女ということはないので、他にお客さんがいなければ家族でどちらかに一緒に入るのもいいだろう。ただしその場所は食堂や部屋からも見える場所なので、湯あみ着が必要。女性用は全身を覆うような湯あみ着。男性用は腰から下に巻くタイプと、茶色の短パンの2種類。男湯、女湯それぞれに備え付けられていて自由に使える。使用後は浴室内の専用のボックスに入れればよい。
・部屋はやや古さはあるが、きれいに管理されていて清潔感がある。
・外国人スタッフがとても礼儀正しく、感じが良い。
・宿泊客には欧米系の人が多く見られた。
・食事はTAOYAなどと比べると種類が少ないが、それぞれ手作り感があり、1つ1つがおいしい。
・アユの塩焼きはやや小ぶりなサイズだったが、食べ放題なのでほしければ何匹でも食べられる。
・ロビー横のラウンジには飲み物とおつまみが用意されていて自由に使える。

建物のすぐ前は河原。ここに2つの露天風呂が掘られている(写真の湯気の立っている部分)。

洋室ツイン

ロビーラウンジ
冬に来たら絶対に体験したい「仙人風呂」の入り方
さて、川湯温泉に泊まった最大の理由は12月~2月のみ現れる「仙人風呂」だ。これは大塔川を堰き止めて作られる25mプール程度の大きさの天然の露天風呂で、川床から湧き上がる熱いお湯に川の冷たい水を引き込んでちょうどよい温度にしたもの。

大塔川と川湯温泉街(奥に見える湯気の立っているところが仙人風呂)

川湯温泉の案内図

仙人風呂
特に土曜日の夜、20~22時はライトアップされ、幻想的な風景が広がる。私たちは土曜日に合わせて訪れた。

さて、露天風呂とはいえ、道路からも丸見えの場所であるから裸での入浴は刑法に触れるとの注意書きがある。また更衣室がなく、ロッカーもない。しかも冬の寒い時期。ではどうするか? 以下は私たちの体験なので、参考にしていただきたい。
・川で泳ぎに行くのと同じ感覚で「水着」と「サンダル」を旅行の荷物に入れた。河原は石がごろごろしているので、サンダルは必須。普通の露天風呂とは違い、風呂の中も床面は河原と同様なので、サンダルを履いたまま入るのが良い。
・「山水館 川湯みどりや」の場合、ホテルからはバスタオル・フェイスタオルを無料で貸し出してくれる。私たちはバスタオルのみを借りた。
・ホテルから仙人風呂へは歩いて5分ほど。寒い冬の時期、行きはまだ良いが、風呂上がりで濡れている帰りはどうしたらいいのか? これが課題だった。
・そこで私たちは、水着を中に着て、その上からホテルの浴衣(ゆかた)を着て、その上からコートを羽織って出かけた。ホテルには浴衣を着て行ってもいいか確認をしておいた。
・仙人風呂に着いたら、コートと浴衣を脱いで水着になり、バスタオルを河原に敷いてその上に置いた。(私たちは持って行かなかったが)カメラやスマホなど貴重品を持っていく場合は、入浴中も目を離さないようにすること。
・サンダルを履いたまま、いざ入浴。
・自然に湯が湧き出ているので、やや熱いところ、ややぬるいところもあっておもしろい。全体的には適温で非常に快適だった。
・屋根もなく、壁もない。星がとてもきれいだった。他では味わえない、唯一無二の開放感いっぱいの入浴体験。
・仙人風呂の中ではスマホなどで自撮りをしている人もいた。普通の風呂では見ない光景だ。
・さて、湯から上がると、バスタオルでできるだけ体と水着を拭き、浴衣が濡れないよう水着の上にバスタオルを巻いた。その上から浴衣とコートを着て、ホテルへ戻った。
・風呂で温まっていることもあり、濡れていても帰り道はそれほど寒さを感じなかった。
・使ったバスタオルはホテルのフロントに返却。
・川で泳いだのと同じなので、ホテルに戻ってからあらためて入浴した。

